今日の「天職人」は、名古屋市西区の「大判焼親爺」。(平成十八年一月十日毎日新聞掲載)
母に貰ったお年玉 後生大事に腹巻へ 初売りに沸くアーケード 何を買おうか品定め 所詮子供のお年玉 どれも高嶺の花ばかり 手の出る物は焼き立ての 大判焼を家族分
名古屋市西区、大判焼の富久屋(ふくや)。店主の家田擴資(ひろし)さんを訪ねた。

「大判焼みたい、餡も皮も何処も一緒だて!違うのは、わしの腕一つ!」。家田さんは、鉄板に手を翳しながら笑った。

家田さんは、愛知県一宮市で撚糸を営む兼業農家の二男として、大正八(1919)年に誕生。
尋常高等小学校を上がると、名古屋へ出て洋服の製造に就いた。そして四年後、大阪の繊維卸問屋へ。「商売を覚えようと思ってな。営業したり裁断したり」。
元々あまり身体が丈夫な方ではなく、徴兵検査ではギリギリの丙種合格。
「これで兵隊行かんでもええぞって、喜んどった」。 しかし糠喜びも束の間。
昭和十九(1944)年に召集令状が届いた。
「俺んたぁが戦争行かされるんだで、負けるに決っとるわさ」。陸軍歩兵部隊に配属され、そのまま中国中支(現、華中)の激戦地へ。
「こりゃかんって弾の下潜って、逃げて歩いとったって」。
予言は見事的中し、やがて敗戦。
昭和二十一(1946)年に復員すると、再び大阪の繊維会社に勤務した。
それから四年後、三十一歳を迎えた家田さんは、西区那古野の円頓寺商店街に、小さな紳士服小売店「富久屋」を開業。
だがその五年後には、婦人服へと転じた。
「男なんかいっぺん売ったら、まあ買えへんでかんわさ」。
やがて戦後の復興期を経て、朝鮮特需へ。庶民の暮らし振りにも明るさが兆し始めた。
ようやく商売も軌道に乗り出し、昭和三十三(1958)に、知人の世話で貴代さんと結婚。
順風満帆と見えた新婚間もない夫婦の航路を、伊勢湾台風が遮った。「水に浸かった物なんて売れせんで、近所の人等に持ってってもらったり、被害の多かった南の方の方に分けたった」。 損害金額は百万円に上り、全てが借金として残された。
「まあこれからは、在庫持ったらかん。食うもんにしよっ」。家田さんは見よう見真似で、大判焼屋に転業。
「どやって作るかもわからんし、近所の十人が十人とも『こやってせえ』って口出すもんでかんわ」。 商店街の仲間達が、夫婦を支えた。

翌年、長男が産声を上げ、続けざまに二人の男子も誕生。
貴代さんと二人で子供を背負い、大判焼にみたらし団子、それとたこ焼きを夢中で焼き続けた。
「昭和三十六~三十七(1961~62)年頃は、店開けようとやって来ると、ズラ~ッとお客が並んどるんだて。何かあったんかとビックリするほどだったて」。
しかし昭和三十九(1964)の東京五輪を境に、大判焼に群がった長蛇の列も、徐々に消え始めた。
「あの頃は各地から『大判焼の作り方、教えてくれ』って乞われたもんだけど」。
真丸な窪みが幾つも並ぶ鉄板は、水溶き粉を注ぎ込むと『チュッ』と小さな鳴き声を上げた。
やがてプクプクと気泡が現れ餡を抱(いだ)く。
「ひゃあ、孫を連れてくる客もおるでなあ。またそれがよう似とるんだて」。

創業当時の大判焼は、一個五円。
庶民の小腹を満たし早四十六年。
今も親爺は鉄板を前に、大判焼を値千金の旨さに焼き上げる。
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大判焼きはスキですね。中に入ってるあんこが熱くて火傷したことかあります。お千代保稲荷に行くといつも買って帰りますよ。
えっ、意外!
お千代保さんは、てっきり草餅だと思ってましたぁ!
・おはようございます。
・大判焼親爺のお話ですね。
・大判焼美味しそうですね。
・写真の大判焼美味しそうですね。
・大判焼の作り方は、シンプルなのですね。
・私は、大判焼が、好きです。具材は、あんこもカスタードクリームも好きです。 大判焼を、一個食べたらお腹が、満腹になりますね。
名古屋駅に行くと、大判焼きを買ってきますが、私はオーブントースターでカリッと焼いてから食べるのが好きです⤴️
只今、冷凍庫の中に白あんの大判焼きが一つ、私のお腹の中に入るのを待っております•̀.̫•́✧
ああっ、それって奥方様の隠し財産の甘い甘いお菓子ですねぇ。
大判焼もチェーン店のものしか買いませんが、お好み焼きや焼きそば屋さんにも風情があったけど人情あふれる触れ合いは時代が移るにしたがってなくなるのは残念ですね。今ではコンビニや冷凍食品で済ませてます。
確かに確かに!
でも今はコロナで、そんな些細な人情のやり取りさえ、マスク越しなんて、なんだかなぁですもの。
大判焼き!
美味しそ~~ぅ⤴
美味いに決まってるぅ!
最近「大判焼き、たい焼き」食べてないな~ぁ~
白あんの大判焼き(御座候)
白あんだから、カロリーもゼロ?
因みに「セブンイレブン」の冷やしぜんざい
これまた!美味い⤴
あ~ぁ~⤴益々、お腹が大黒様!
さすが、甘党の落ち武者様!
「天職一芸〜あの日のpoem 172」
「大判焼親爺」
今日も暑かったですね。
う〜!思わず 冷凍の今川焼きを食べてしまいました。レンジで温めてからトースターでカリッと焼きました。
それでも やっぱり母が買ってくれる大判焼き?今川焼き?の焼いてるのを眺めながら待っている時も楽しかったです。
ええっ、お母様お手製の大判焼とは、こいつぁー豪華じゃないですか!
大判焼き だ〜い好き!
買い物先で 大判焼きや鯛焼きやみたらし団子のお店があると いつもの如くフラ〜っと引き寄せられちゃうんですよね。
時間帯が夕方だと「今 これを食べると夕食が食べれなくなる…」と自分と葛藤する時も(笑)
私は 白餡がちょっぴり苦手。
知立名物の大あんまきもシンプルな黒餡ばかり食べてます( ◠‿◠ )
大判焼きも鯛焼きもあんまきも 皮の部分もめっちゃ美味しいんですよね〜
ああっ!ぼくも白餡と漉し餡はちょっと・・・。
でも母に似て、こう見えても餡子派なんです。
お蔭で娘もクリームっぽいものより、粒餡一筋です!
まぁ、今はどうだかわかりませんが・・・。