昭和がらくた文庫47話(2014.10.23新聞掲載)~「草野球ならぬ草サッカー」

プロ野球シーズンが終わると、昭和半ばの腕白坊主たちの草野球もシーズン・オフへ。

すると代わりに登場するのが、冬場のサッカーと決まっていた。

そうした背景には、小学校の野球部も、秋から春まで部員のトレーニングを兼ね、俄かサッカー部となったのと、体育の授業でももっぱらサッカーが取り入れられたからだ。

今ほど豊かで無かった昭和半ばの時代。

腕白どもは、年がら年中、擦り切れた半ズボンに、真冬でも精々が、毛玉だらけの長袖セーター姿。

剥き出しの膝っ小僧は、冬の寒さで白い粉が吹いていた。

故にそんな身なりでは、サッカーに比べ運動量の少ない野球じゃ、寒くて身が持たぬ。

写真は参考

だから絶えず走り続けねばならぬサッカーが、寒さ凌ぎに大いに役立った。

とは言え、草野球ですら満足に1チーム9人が集まらぬのに、サッカーの11人が容易に集まろうはずも無い。

だから草野球ならぬ草サッカーも、それは名ばかり。

1チーム2~3人も集まれば御の字。

そして缶蹴りに毛の生えたような、サッカーの真似事でお茶を濁す。

しかも野球道具も満足に揃わぬように、本物のサッカーボールなど、何処にも有ろうはずなどない。

となれば、無い知恵を絞り代用品を漁るしか手立てはない。

「姉ちゃんがプールに持って行く、ビーチボールなんてどう?」と、友の一人が得意満面で家へと向かった。

写真は参考

いざ、西瓜柄したビーチボールでキックオフ。

するとサッカーボールを遥かに凌ぐ大きさで、蹴りやすいし、おまけにどんなに強く蹴ったシュートでも、山なりにフワ~リ。

さらにその度、ボールの中の鈴がチリリ~ン。

まるですべてがスローモーションで、誰もがサッカー王、ペレになり切ったものだった。

写真は参考

しかし白熱したドリブルの末、ビーチボールは敢え無く縮でしまう。

「ああっ、どうしよう!姉ちゃんに叱られる!」と、友の顔色は見る見る青ざめた。

まるでワールドカップのピッチを舞った、サムライブルーのように。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「昭和がらくた文庫47話(2014.10.23新聞掲載)~「草野球ならぬ草サッカー」」への9件のフィードバック

  1. 私の時代、悪ガキ共は、サッカーはしなかった。
    何故か!野球のボールは買えても
    サッカーボールは高くて買えなかったのです。
    それに、サッカーしょうか?
    と!言う悪ガキもいなかったし・・

    1. ぼくが小学生の頃は、野球部の子たちも冬になるとサッカーをやっていたものです。
      大きなゴムボールに、黒い五角形と白い六角形の柄がプリントされただけの、とってもチープな物だった記憶があります。

  2. 子供は遊びの天才⤴️無ければ無いようにちゃんと考えて遊ぶんだよねぇ。しかし、ビーチボールを提供してくれた子はお姉ちゃんから大目玉を食らったんじゃないかしら(笑)

    *あっ!!に反応してくれた若干一名様、流石です\(^o^)/

    1. そうですって。
      なんでもその辺に転がっている物を、なけなしの知恵を絞って見事に代用したものですよねぇ。

  3. そう言えば我が家には 浮き輪はあったけどビーチボールはなかったなぁ〜。なぜだろう?
    小学校高学年の頃は バトン部(バトントワリング)に在籍してたので オールシーズン練習ばかり。週末は 運動系の大会でバトンの発表を見て頂いたりしてました。冬場は いつも寒くてお腹が痛くなり毛布が必需品。
    よくやってたなぁ〜( ◠‿◠ )

    1. ぼくら男坊主の多くは、真冬でも半ズボンに継接ぎのセーター一枚で、平気で駆けずり回っていたものでした。
      膝っこぞうに真っ白な粉が吹いちゃってたものです。

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