新シリーズ「ちょいと寄り道」①


「ねぇ、豊橋へ寄ってかない」。

車内誌を閉じ、妻が突然つぶやいた。

東京へと向かうのぞみが、名古屋駅に滑り込む直前に。

写真は参考

「豊橋か…」。

共に学生時代を過ごした町だ。

豊橋駅へ降り立つと、日本橋の料亭に電話を入れ、急遽予約を取り消した。

「せっかくの記念日なのに…。本当にいいのか?」。

写真は参考

妻は駅前大通りの路面電車を、嬉々として眺めている。

「よく乗ったね。チンチン電車」。

写真は参考

妻の声が弾む。

共に貧乏学生だったあの頃。

抱えきれぬほどの夢以外、何も持ち合わせてはいなかった。

「あっ、確かあそこ。まだやってるかしら?」。

妻はどんどん記憶の彼方の、洞窟の奥へと潜り込んでゆく。

「あなた!開いてるわ!」。

写真は参考

妻が爪先立ちで振り向き、店先で大きく私を手招いた。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「新シリーズ「ちょいと寄り道」①」への4件のフィードバック

  1. おやおや豊橋ですか?
    恋太のお膝元ではないですか?
    しかも、
    共に学生時代を過ごされたとは!!
    暫く続きそうなので展開が楽しみでぇす。
    さて恋太は今、
    北陸本線米原から石川県最初の駅でもある大聖寺という所におります。
    実は本日能登地震で被災した珠洲市へ行ってきました。
    妻の実家があるからです。
    家屋は倒壊し住めません。
    独り暮らしの義母なんとか無事で、
    避難所から早々に愛知県の被災者住宅に入居できました。
    諸々の手続きが出来ていないので行ってきた次第です。
    実家があるのは浜の前。
    防風林が間にあったので津波の被害は免れましたが、
    両横の地区は漁港であったために津波被害は甚大です。
    手付かずのままの現地。
    役場の職員はそれぞれの所属県のベストを着用しての窓口業務。
    外部の者は公共の場所に設置された簡易トイレしか使えません。
    各所で給水の順番待ちの列が見受けられました。
    恋太の地元から真上に400キロ。
    たったそれだけなのに・・・
    墓石も倒れお骨が見えている状態。
    ブルーシートで応急処置。
    今はそれしか出来ない虚しさ。
    只ね、
    実家の近く全壊判定された自宅に避難している妻の叔母がいるのですが、
    そこで飼っている猫は妻を見ると逃げて行くんですよ。
    それなのに今日は尻尾を立てて擦り寄ってきたそうです。
    ”ここから連れ出して! 私を助けて!”
    そう言ってるように思えましてね。
    犬は人に懐くが猫は家に懐くらしいです。
    明日帰ります。
    自分の日常に。
    平凡だけど幸せな日常に。

    1. そうだったんですかぁ!
      今年は元日から、日本中が能登に釘付けになりましたものねぇ。
      でも、義理のお母さまがともかくご無事で、それだけでも何よりでしたですねぇ。
      「犬は人に懐くが猫は家に懐く」。
      なるほど、そう言われると頷けちゃいます。

  2. 豊橋で初めて路面電車に乗る事になり 車が行き交う真ん中にある停留所に向かう時に まずドキドキ。そして 電車が来るまでの間 またドキドキ。
    自分の近くを車が通る事が 怖かったから…。
    電車に乗っても どこか落ち着かなかった事を覚えています。
    普通のバスとは違う感覚。
    遠目で見ると 「ワァ〜!乗ってみた〜い!」って思ってたんですけどね。(笑)

    1. 今じゃあ、チンチン電車も特定の町でしか見られませんものねぇ。
      ぼくは最近と言っても6~7年前に、鹿児島のチンチン電車に乗って、薩摩切子の工房を訪ねたのが最後です。
      子どもの頃は、毎週のように、ボーイスカウトのクラブハウスのあった、八事の半僧坊まで、名古屋駅から1時間と書くチンチン電車の市電に揺られて、通ったものでした。

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