「転生の追憶」2話

「ボーッと黄昏れてんじゃねぇよ~っ!中高年癒しの楽園ラジオ」FM WATCH 78.5MHz 毎週火曜日15:00~16:00で始まりました‼(※詳しくは、6月19日のブログをご覧ください)※再放送は、毎週火曜日の19:00~20:00です!

home | みんなのラジオ局 FMわっち (fm-watch.jp)

FMわっち 視聴 | JPradio.jp

次回の「オカダミノル ほろ酔いLive」は、来春の開催となります!

「転生の追憶」2話

一年前、貿易商の父に連れられ、女は香港の夜会に出かけた。父は男を、日本への留学経験を持つ、大切な取引先の子息だと紹介した。

参考

それが二人の出逢いとなった。写真はその時に撮影されたものだ。

「この戦争の行く末が、私にはわからない。でもとても恐ろしい気配を感じます。どんな事が起ころうとも、必ず生き抜いてください」

「戦争さえ終わったら、もう一度逢えるかしら」

「私には何もわかりません。ただ一つだけわかっているのは、あなたと巡り逢えて何よりも幸せだったということだけです。こんな別れが待っていなければ」

女は男の胸に顔を埋めた。

「戦争が終わって、二人とも生きていられたら、必ずまた逢えます。でも、もしそれが叶わなかったとしたら、今度こそ戦争で憎しみ合う事の無い、同じ民族として同じ国に生まれましょう」

「…きっと」女は俯いていた顔を上げ、頬を伝う涙を拭いもせず、左手の小指を差し出した。

参考

「私の国のおまじない」

男は、火傷でくっ付いてしまった左手の薬指と小指を広げ、女の小指に絡めた。

「満州に出向かれたお父さんには、あなたが今日九龍(カオルーン)を発ったと打電しておきましよう。どうか、ご心配なく。そしてご無事で」

写真は参考

九龍の港に出船の汽笛が響き渡った。霧雨に打たれる旭日の艦旗が、風を(はら)んだ。デッキで千切れるように手を振る、女の姿が霧に(いだ)かれて行く。男は埠頭に佇み、千切れ去った紙テープを握り締めた。

ふるなび

このブログのコメント欄には、皆様に開示しても良いコメントをドンドンご掲示いただき、またその他のメッセージにつきましては、minoruokadahitoristudio@gmail.comへメールをいただければ幸いです。

投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「「転生の追憶」2話」への2件のフィードバック

  1. 小学校1,2年の頃 母方の親戚家族と一緒に 大阪から福岡までフェリーで行き 福岡から熊本には車で行った事があります。
    まず 車でフェリーに乗船する事自体が不思議で。大広間みたいな所で みんな雑魚寝状態だったような。
    最初のうちは 船内やデッキをウロウロ見学してたけど そのうち気持ち悪くなり ず〜っと寝てました。
    その頃から 三半規管が弱かったんでしょうね(笑)
    フェリーが出航する時 デッキに居たんですけど 本来 楽しいはずなのに 何故だか寂しいとも違う不思議な気持ちになった事も覚えています。
    でも 船旅に限らず 九州から帰る時は いつも両親に気付かれないように泣いてたんですけどね( ◠‿◠ )

    1. きっと九州は、夢ちゃんのもう一つの心の故郷に間違いないんでしょうねぇ。
      ぼくも母の故郷鹿児島に行くと、不思議な安堵感のようなものに包まれる気がしますから。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です