ゆいぽおと「 長良川鉄道ゆるり旅」2011.9.13 ⑨

洲原駅界隈「姿のブッポウソウもお洲原詣り~洲原神社千年の御霊験」

江戸時代中期の建立といわれる、楼門を潜り抜けると、静謐とした杜の匂いに包まれる。

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楼門の脇には、樹齢500年にも及ぼうかという男檜と女檜が、仲睦まじくまるで寄り添うかのように天空へと枝を伸ばす。

「この2本の檜には、昔から縁結びのご利益がありまして、今も恋人たちが両手を広げ抱き付いてゆかれます」。

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白衣に白袴姿の宮司、跡部亮一さん(54)だ。

「昭和の半ば頃までは、瑠璃色の体に真紅の嘴をしたブッポウソウが、この境内の老木に巣を掛けて、卵を産み雛を育て上げ、秋風が吹き始める頃になると、ジャワ、スマトラ、ボルネオ方面へと帰って行ったそうやに」。

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今ではもう残念ながらその姿を見ることは無くなったと言う。

宮司の言うブッポウソウとは、俗に言う姿のブッポウソウだ。

森の中から夜になると聞こえる「仏法僧」の鳴き声の主こそが、ブッポウソウだろうとこのありがたい名が付いた。

しかし実際には、誰一人としてブッポウソウが「仏法僧」と鳴くことを確認した者はいない。

故にその後も、声の主に関する謎が取り残された。

さて、読者諸兄はご存知であろうか?

ブッポウソウと呼ばれるもう一種類の鳥がいることを。

正式には学術名ではない、いわゆる俗称だが。

それが声のブッポウソウと呼ばれる、コノハズクだ。

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コノハズクは体長15㌢ほどの小型のフクロウ。

愛知県の鳳来寺山でよく泣き声が聞こえたこともあり、昭和40年に愛知県の鳥として選定されている。

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鳳来寺山のコノハズクだが、洲原神社のブッポウソウ同様、昭和50年後半に入ると姿の確認はおろか、鳴き声さえまったく聞かれなくなったという。

だが近年では、わずかにその鳴き声が確認されるように回復しつつあるようだ。

ではなぜそのコノハズクの別名が、声のブッポウソウなのか。

昭和10年6月、NHK名古屋放送局が、鳳来寺山から全国に向け「仏法僧」の鳴き声のラジオ中継を試みた。

するとその放送を聴いていた、東京浅草の傘屋から「家で飼ってる鳥も、同じ声で鳴き始めたぞ」との一報が。

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その正体こそが、紛れも無い小型フクロウのコノハズクであったのだ。

その後、鳥類学会は右往左往の大騒ぎ。

「今更学術名を変更しても、混乱を招くだけだ」と。

ならばと編み出された苦肉の策が、「声の仏法僧=コノハズク」「姿の仏法僧=ブッポウソウ」だ。

とは言え、それはそれで未だに十分まどろっこしい限りだが。

「ブッポウソウもコノハズクも、共に人里離れた大自然の森の中で、静かに子を成し暮らしとったんやて。ところが高速道路が通って、車もどんどん増える一方やで、もっともっと深い森の中へと、引きこもってしまったんやろな」。

樹齢五百年を数える、神木に囲まれた洲原神社。

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今でもこれほど浮世離れした神域はないと、鈍感過ぎるぼくにも感じられる。

しかし、我ら人間よりも遥かに鋭敏な感覚を持つ鳥たちにとっては、この神域ですら、もはや近代文明の手垢に穢された、子育てに適さなぬ場所と映ったのだ。

洲原神社/美濃市須原

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「ゆいぽおと「 長良川鉄道ゆるり旅」2011.9.13 ⑨」への2件のフィードバック

  1. 大人になって一度バスツアーで
    小学校の修学旅行で訪れた
    奈良の春日大社と東大寺へ行きました。
    いや~ぁ⤴改めて思ったのが
    補強はしていると思うけど、
    何百年と経っても当時のまま!
    そんな職人技が現在も養われている。
    日本人って凄い!と思う!
    いつか?
    京都御所へも行きたいと思っています。
    行きたいところは沢山あるれけど
    足腰は老いてゆく、動ける今しかないのかも?
    CMであったよねぇ!
    そうだ!京都へ行こう♫

    1. ぼくもJRの車内吊り広告「そうだ!京都へ行こう♫」で見た光景に一目惚れして、大原三千院の苔むした「童地蔵」を見に行ったことがありました。
      なんとも素敵なリトルワールドでしたーっ。

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