「とんでもねぇくっせぇ臭いにならんと、煮たく文字は、うめぇねぇんやさ」。

高山市の在郷料理「京や」の女将は、漬け物樽を開け思わず顔をしかめた。

「『煮たく文字』とは、公家言葉の『く文字(漬け物)』を煮るでやと、誰かが言わはったわ」。
煮たく文字は、古漬けの蕪の葉を塩抜きし、胡麻油と調味料で炒め煮した、高山ならではの郷土の味だ。
「昔はみんな銘々に、夏の終わり頃になると作りよった。せやでその頃になると、とにかく町中がくっそてかなんだわ」。
女将が嗄れ声で笑った。
「わたしら漬け物みたいなもん、どんだけ古なっても、よう捨てんのやさ。もったいないでな」。
盆暮れには、古里から離れて暮らす者達が帰省する。
彼らは女将の店へと顔を出すと、開口一番「煮たくあるか?」と、声を揃えるとか。
「今はもうどこの家も、作らはらんけど、煮たくはやっぱり高山のお袋の味なんやさ」。

『名月や 三々九献交わしつつ 母を偲びて 煮たく文字』ミノル
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漬物・・
大好きやなぁ!
何はともあれ「江戸むらさき」よりも
漬物が食卓テーブルには欠かせないのです。
ところで「たくわん」「たくあん」
どっちが正解?
そりゃあ「たくあん」じゃないですか?
臨済宗の沢庵和尚の名からじゃなかったでしたっけ?
ぼくは子どもの頃からたくあんも漬物そのものがちょっと苦手で、たくあん一切れを口の中に入れ、何時間もかけて舐めていたものでした。
すると最後は、黄色っぽいたくあんの色が落ち、もとの大根の一切れに早変わりだったものです。
それでも今じゃ、高山の「めしどろぼう」や白菜漬けやら、守口漬けなら喜んでいただけるようになりました。
おばこ煮を思い出しました。母がよく食卓に出してくれました。たくあんに、鷹の爪や煮干しを加えて醤油で煮たオカズです。もう、ここ何十年間食べたことはありません。なつかしい料理です。
食べ物をとてもとても大切にして工夫した郷土料理なんでしょうねぇ。
それこそ正におふくろの味ですものねぇ。