「 世界家紀行」㉒

04.10.1中日新聞三河版フジケン連載広告掲載

「マングワ村の精霊の家」

この村は、24時間365日、ブッダと共にあるようだ。

日本は八百万(やおよろず)の神々、インドには3億3千万の神々が()()すとか。

ならばここ、タイのバン・マングワ村には、いったいどれほどの神々が、土と向き合って暮らす善良な民を、(まも)っておいでなのだろう。

稲刈りの日の朝、家長がご馳走を小皿に取り分け、庭先に奉られる精霊の家に供物を捧げた。

写真は参考

精霊の家は、地中に差し込んだ丸太の上に、左右と正面がポッカリ開いた四角い箱を挿げただけの粗末な造り。

写真は参考

廃タイヤのチューブが、雨除け用に屋根を覆う。

家長は燈明を灯すと(ひざまず)き、胸の前でそっと両手を合わせた。

ひた向きに祈りを捧げる姿は、何人たりといえども崇高な美しさを放つ。

仏の加護というオーラが舞い降りるせいか。わずかな静寂が、父を呼ぶ子どもたちの声に()き消された。

高床式の木造家からは、朝餉(あさげ)の薫りが立ち上り、子どもらは転げ出すように父を呼びに走る。

写真は参考

犬が後を追う。

ニワトリは何事かとばかりに、運動不足の羽根を広げて身をかわす。

一昔前、ぼくらの国のどこにでもあった、ありふれた小さな幸せ。

どうにもぼくは、この風景に同化しそうだよ。

ねえ、こんな幸せじゃあ、君には小さ過ぎますか?

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「「 世界家紀行」㉒」への2件のフィードバック

  1. ありふれた、小さな幸せ・・
    やはり何はともあれ健康が一番ですねぇ!
    オカダさんだって健康で居れば
    毎晩、プッハァ~⤴やれるもんねぇ!
    それが幸せって言うもんです。

    1. そうですとも!
      どうせ負け惜しみなんですが、抱えきれないほどの幸せを手にすれば、そり見返りに災いをも背負子むんじゃないでしょうか?
      右へ左へ弥次郎兵衛のように、吉と凶に揺れ動き、水平になったところで命が全う出来ればそれで良しとすべきなんでしょうねぇ。

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