「 世界家紀行」⑰

04.8.27中日新聞三河版フジケン連載広告掲載

「大地に帰する家」

エチオピアの、干上がった誇りっぽい大地。

写真は参考

なぜか子どもの頃を想い出した。

土埃(つちぼこり)()き散らし、凸凹道を走りぬけた(にっく)き大衆車。

入学式への道。

ぼくはピカピカのランドセルを重そうに背負い、母は黒い留袖に髪を結っておめかし。

しかし心無い車がゆき過ぎた後、ぼくと母は大地色したベールに包まれていた。

首都アディスアベバを西へ。

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車で2時間のモウロ村は、見事なまでに大地と一体化している。

ぼくを乗せた車が村の中心部で止まった。

巻き上げた土埃の中から、土の柱のような男が姿を現した。

真っ白な歯とピンク色の歯茎(はぐき)を見せ、大らかに笑いかける瞳が何とも人懐っこい。

両手を大きく広げ、異邦人のぼくを(わら)()き屋根の小さな家に迎え入れた。

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もてなしはちょっと塩辛いコーヒーと、エチオピアのパンであるインジュラ。

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飢餓(きが)(ふち)彷徨(さまよ)うこの国では、最大級のもてなしのはずだ。

貴重な明日の食料なのに。

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この大らかさは、いったいどこから来るの?

果てしなく広がる母なる大地。

感傷に(ふけ)るぼくの言葉など、一陣(いちじん)の風が土埃と共になんなく吹き飛ばして行った。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「「 世界家紀行」⑰」への4件のフィードバック

  1. エチオピア・・
    赤道の少し上にある国でしょう。
    飛行機で何十時間・・
    私は遠慮させて頂きます。
    流石に飛行機の中での何十時間は退屈
    ただでさえ歳取って、せっかちなのにムリムリ⤴
    飛行機はせいぜい長くても3時間
    若い頃は長時間乗っていても全然気にならなかったけど
    時間が勿体なく思えて来ました。

    1. そうですかーっ。
      ぼくは落ち武者殿とは真逆で、飛行機での移動時間ほど至福の時間はありません。
      しかし高所恐怖症ですが、飛行機の中は別物です。
      まだまだチャンスさえあれば、まだ見ぬ世界に出掛けて見たいものです。

  2. 川口浩の探検シリーズを揶揄した唄を思い出しました。唄の内容に笑いこけましたが、実態だったのでしょうね。僕はカノ番組がノンフィクションと思って食い入るように観てましたが。

    1. 子どもの頃って純真ですから、TV界の大人たちの茶目っ気たっぷりな冗談さえ、時に真に受けちゃったものですものね。

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