『78歳の万年少年』
2007.夏 季刊誌掲載
いつもより早い春の訪れを、三河湾から寄せ来る柔らかな風に感じた。
海沿いに竹島を眺めながら。
すると防波堤の上で観光客のオッチャンが、両手で竿を海に向かって投げる仕草を、ひたすら繰り返しているではないか!
あのオッチャンも釣り道具を携えてくればよかったと、春の訪れを体全体で感じてるんだろうなぁ。
そんな仕草に、オッチャンの心の声まで聞こえて来るようだ。
大昔の人気テレビ番組「ジェスチャー(NHKで1953~1968年まで放送)」の柳家金語楼と水の江滝子でもあるまいに。
この時点で「ああっ、懐かしい!」とうかつにも思わず頷いてしまったあなたは、紛れも無く昭和半ばの立派な生き証人のお一人に違いない。
ブゥウウ~ン ブゥウウウ~ン
時ならぬ爆音を撒き散らしながら、さざ波に爆ぜる様な小さなボートが、ぼくの視界の先を右から左へと跳ね飛んで行った。
あれってまったくもって、完全にスピード違反じゃないのか?
いや待て、たかだかラジコンボートごときを、海上保安庁が取り締まるはずもあるまい。

すると再びブゥウウウ~ン。
今度はさっきとは反対方向から、ぼくの視界にフレームイン。
どこで誰が操縦してるんだ?
それらしいマニアックな人影も見当たらない。
「それにしたって、とんでもないスピードじゃないか?」。
ぼくの独り言に「まぁだいたい60~70kmくらいは出とるだぁ」と、堤防に腰掛けていた老人が振り返り、親し気に笑いかけて来た。
どうやら日向ぼっこに高じていたわけでもなさそうだ。
すると再びブゥウウウ~ン。
あれれっ!
堤防に腰掛けている老人は、太腿辺りにラジオのような機械を抱え、レバーをしきりに操っているではないか!
するとまるで老人の仕草に呼応するかのように、爆走ボートが我が物顔で湾内を飛び跳ねているではないか!
「ええっ、まさかぁ!」。
「ラジコンは愉しいだぁ!」。
老人はまるで少年のように嬉々として笑った。
蒲郡市竹島町、ちどりや模型店の酒井正敏さん(78)だ。

酒井さんのスピードボートのラジコン歴は、昭和30年にまで遡る。
「あんな頃は、まんだラジコン屋なんて豊橋と岡崎にしかあれへんかっただぁ。だもんでしかたなしに、サラリーマン勤めしながら自分で模型屋やりかけただわさ。ほんだで店に並べとる商品なんて、みーんな自分が欲しかったものばっからぁ」。
ラジコンのスロットルを戻しながら何とも愉快そう。
「ヘリに比べたらボートなんて簡単だわ。ヘリは上下左右に操らなかんけど、ボートのレースは片っ方にしか舵切らんでもええだで」。

やっぱり伊達や酔狂で、半世紀以上もラジコン遊びに呆けて来ただけじゃない。
天下一の万年少年だったから達観できた、神憑りの離れ業だ。
「でもよくよく考えて見ると、それって・・・。神憑りの離れ業とか、そんな崇高なモノじゃなくって、言い換えればただのズボラな操縦で万事OKってことだよなぁ」。
ぼくのつぶやきが聞こえたのか!
「ま~ったくそうだわ!だもんで俺みたいに年喰ったって、ボートならいまだにチョチョイのチョイで操れるだぁ」。
万年少年が大笑い。
天晴れ天晴れ!
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ラジコンって・・
多分?男子は好きだと思う❢
車、飛行機、船等どれもこれも憧れる。
ラジコン繋がりで、最近、真剣に考えた事が・・
これからは「ドローン」の時代
おもちゃのようなドローンなら免許は要らないと思うけど
何かと凝り性な私・・
ドローン免許を取得しようかと
国家試験があり、まぁ~⤴それなりの金額が❢
でもさ~ぁ⤴
いたって、手先が不器用な67歳の私
直ぐに❢諦めたよぉ❢
準高齢者は大人しくしてよっと~ぉ⤴
そっかぁ!
そう言われたら、ドローンだって立派なラジコンですよねぇ。
あっちこっちにドローン操縦スクールを見かけますものねぇ。
でも何でドローンに心惹かれちゃったんでしょうねぇ・・・。
あっまた良からぬことを考えてんじゃないんですか?
テレビで見たのですが、竹島にはウユニ塩湖ならぬ『ガマニ塩湖』と言う写真映えする場所があるらしい。ちょっと気になるぅ⤴️
へぇー、あんな小さな島の中にですかぁ!
男性って やっぱり一生少年なのかな⁈
よく 年齢を重ねた男性が ラジコンもそうだけど バイクやプラモデルなどに夢中になってる方 みえますよね⁈
夢だった事が叶うと毎日楽しくて生活にも張りが生まれるだろうから やっぱり素敵ですね!
でも女性は 現実的だからなぁ〜(笑)
男どもは万年少年を装い、現実逃避を重ねているのかも知れませんけどねぇ。
って、そりゃあぼくも一緒かぁ!