「遥かなるカリーテンプルへの道!」(第4話)

2000年10月3日 毎日新聞朝刊掲載

「晴れて炎天下で地鎮祭」

1999年4月2日。

インド・ブッダガヤのカリーテンプルの敷地で、厳かに地鎮祭が執り行われた。

出席者は、内田・清水・紀氏の3人の僧侶とぼくだ。

敷地の入り口には竹竿が立ち、その天辺には紙垂のようにマンゴーの葉を吊るした藁縄が張り巡らされている。

敷地の四隅に植えられたマンゴーの木は、魔除けだとか。

祭壇は、白布をかけただけの簡素なテーブル。

色とりどりの花や供物と線香も準備されている。

地鎮祭で導師を務めるのは最年長の清水だ。

両脇を内田と紀氏が固める。

3人とも法衣を纏った正装である。

まだ午前9時だというのに、ブッダの里の気温は既に30度をはるかに上回った。

何はともあれ早速、清水導師による酒水(しゅすい/祭壇の四隅に水を振り掛け清める)と呼ばれる儀式が始まり、読経へと続いた。

約15分ほどの地鎮祭ながら、村人たちがあちらこちらから「何事が始まるんだ!」とばかりに集まり始めた。

サリー姿の女たちや、真っ黒な顔に筋張った体の男たちは、思い思いに足を止め、読経に合わせ申し合わせたように誰もが合掌する。

彼らの大半はヒンドゥー教徒であるにもかかわらず。

しかし熱心に祈りをささげる姿は、宗教心の薄いぼくの心にさえも染み入った。

読経が止み、最後の合掌も終わった。

3人の僧侶がゆっくりと顔をもたげた。

エエッ!

導師の清水が泣いているではないか!

しかもはたを憚らぬ号泣ではないか!

何故?

重責を務め終えた開放感からであろうか?

様々な想いがよぎる。

しかし確かに清水の頬を、涙が止めどなく伝っていた。

ただただ涙することで、大いなる夢にまた一歩、確実に近付いたことを自ら確かめでもするかのように。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「「遥かなるカリーテンプルへの道!」(第4話)」への8件のフィードバック

  1. マンゴーで思い出した。
    我が家の猫のひたいほどの庭に・・
    何か?芽が出て来たな~ぁ⤴と
    もうすっかり忘れて・・
    思い出してみるとそれがマンゴーの木だったんです。
    やせ細った、木と言って良いのか?
    草が大きくなったような感じ、今じゃ~約70㎝位の背丈になっています。
    きっと実なんて出来る事なく・・
    また、何を?植えたか忘れてしまうんでしょう❢
    そしてキットこんな鼻歌を・・
    ♬この木何の木?気になる木♫ってねぇ⤴

    1. マンゴーの庭木なんて、さすが落ち武者殿の御殿は違いますねぇ。
      マンゴーの実がなったら、マンゴープリンでも作りましょうか!

  2. 読経の写真から真摯なみなさんのお姿がみえます。オカダさんは、写っておられなくて残念ですが、写真撮影をご担当されておられたのでしょうか。宗派が異なるお坊さまでも、唱えるお経は共通しているのでしょうか。興味が尽きません。

    1. 写真は全てぼくが下手糞ながら撮影していました。
      ブッダガヤには世界各地の仏教徒がおいでになるため、仏教を重んじる国の寺院がたくさんあり、街中ではそんな僧侶たちの姿をよく見かけます。
      ネパールやタイの僧侶も、日本の僧侶の読経に合わせ、それぞれイントネーションの違いはあれど、元々のヒンディー語の経典を読経されておりました。

  3. 名古屋市内の某お寺で、沢山の僧侶による読経姿を目にした事があります。それはそれは圧巻で心震えましたねぇ。

    1. 一糸乱れぬような読経は、凛として心の奥底に染み入るものですよねぇ。

  4. 涙… なんだか素敵ですね。
    いろんな想いがあり緊張もあり そして何より皆さんの祈りが全てを包み込んでたんじゃないでしょうか⁈
    物凄いパワーですよね!
    ん〜やっぱりワクワクします( ◠‿◠ )

    1. どこの国の僧侶であれ、纏う法衣にこそ違いはあれど、一心に祈りを捧げる姿には、やはり心振るわされるものですねぇ。

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