Gifu Poem「冬の花火と寒粥」と「昭和懐古奇譚」(2012.12新聞掲載)

写真は参考

まずは「冬の花火と寒粥」がテーマですので、ぼくの「雪花火」を久しぶりにお聴きいただきたいと思います。

「雪花火」

写真は参考

雪見格子に(くゆ)る湯煙 盆を浮かべてふたり酒 

髪を束ねた湯浴み姿の 君の(うなじ)に雪が舞う

冬の(みぎり)の雪闇割いて ヒュールルと鳴いて舞い上がる

まるで春待つ雪割草か (りん)として気高い 雪花火

写真は参考

雪見格子に跳ねる影絵は 君が描きし雪兎

ポッと紅挿す君の頬 まるで一葉(いちよう)の浮世絵か

冬の砌の雪闇突いて ヒュールルと咲いて闇に融ける

まるで春待つ雪割草か 凛として気高い 雪花火

写真は参考

冬の砌の雪闇割いて ヒュールルと鳴いて舞い上がる

まるで春待つ雪割草か 凛として気高い 雪花火 

以前アップした動画です。
写真は参考

冬の花火に牡丹雪 紅を(まと)って舞い落ちる

湯船に浮かぶ(たらい)(ざけ) 年も暮れゆく旅の宿

浮かれついでのもう一献 褞袍(どてら)羽織りで酔い覚まし

「湯冷めするわ」と妻が注ぐ 湯の香揺蕩(たゆと)(かん)(かゆ)

「加藤隼戦闘隊の飛行帽?」

参考資料

昭和32年生まれのぼくにとって、幼い頃から耳馴染んだ音楽と言えば、軍歌に演歌と相場は決まっていた。

それが戦中派だった両親の、一粒種のぼくに対する情操教育であったとすれば、生まれ育った昭和の時代に、未だ拘わり生きる己が姿にも頷ける。

「あっ、加藤隼戦闘隊だ!」。

ビー玉遊びに講じていると、友の声がした。

♪翼に輝く 日の丸と 胸に描きし赤鷲の 印はわれらが戦闘機♪

と、鼻歌交じりに向こうから、自転車がギーコギーコと、油の切れかかった軋み音を放ちながらやって来る。

写真は参考

どうにも戦闘機の隼と、丸石のトッチャン自転車とでは、似ても似つかぬ。

飛行機乗りならぬ自転車乗りは、短めの鍔の出た革製の耳あて帽と、水中眼鏡を小振りにしたようなゴーグル姿。

襟にボアのついた紺色ジャンパーに、日本手拭のマフラーを風に靡かせ、作業ズボンに安全靴という出で立ち。

写真は参考

耳あて帽とゴーグルに隠れ、顔こそわからぬものの、あの調子っぱずれな歌声は、紛れも無く家のお父ちゃんだ。

キキキキキーッ。

虫唾が走るほどの、錆び付いたブレーキ音を響かせ自転車が止まった。

「どや?戦闘機乗りみたいで、格好ええやろ?」。

父はいつになく気取ってゴーグルを外した。

「今日なぁ。帰りしなに八幡様の前を通ったら、古道具屋が店出しとってな。これが目に付いたんや。そしたら店の(もん)が『あんたはん目が高い!これぞまさしく、ホンマモンの加藤隼戦闘隊の飛行帽やで』って。そいでもって、『もう今日は店仕舞いやで、今こうてくれるなら目一杯まけとくわ』って言うやないか。今日は給料(もろ)たばっかやし…」。

父は子どもたちの羨望の眼差しにご満悦。

飛行帽の耳あてを下ろして顎の下で止め、ゴーグルを掛け自転車に跨った。

♪印はわれらが戦闘機♪

またしても調子っ外れな鼻歌と共に、軍手に包まれた右手で、子どもたちへ敬礼まで送る念の入れよう。

「ちょっと、あんたあ!いつまでそんなとこで油売っとんの!はよ給料袋持ってこんと、晩のおかずも買いに行けんやないの」と、調子っぱずれな歌を聞きつけたのか、玄関先では母が仁王立ち。

すごすごと自転車を押し帰る父を、手ぐすね引いて待ち構えているではないか。

「なんやのこれっ!給料袋の封が切ったるやない!ああっ!」。

母は見慣れぬ飛行帽にゴーグルと、口の開いた給料袋を交互に見やった。

「すまんな。でもこれ、ホンマモンの加藤隼戦闘隊のもんで、値打にしたる言うもんで…」と、父は恐る恐る母に飛行帽を差し出した。

「どこがホンマモンや!これ見てみい!」。

母は飛行帽の裏側のタグを指さした。

そこにはあろうはずも無い、アルファベットが並んでいるではないか。

「こんなもん、どうせ進駐軍の置き土産に決まっとるわ!」と、憤怒の母を前に父は、さっきまでの威勢はどこへやらすっかり形無しだった。

写真は参考

このブログのコメント欄には、皆様に開示しても良いコメントをドンドンご掲示いただき、またその他のメッセージにつきましては、minoruokadahitoristudio@gmail.comへメールをいただければ幸いです。

投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「Gifu Poem「冬の花火と寒粥」と「昭和懐古奇譚」(2012.12新聞掲載)」への12件のフィードバック

  1. 雪花火♬
    久し振りに聞きましたが・・・
    オカダさん、手抜き!!
    どうせなら、2021年10月15日現在のオカダさんが観たかった。
    何でか?
    オカダさんのブログ見られないオカミノファミリーのファンの方から
    」オカダさん、元気にしているんかな~ぁ?」
    と、連絡があったりします。
    返事にとても困るんですぅ!
    だから、いつも・・
    「ブログ毎日、更新しているから元気だと思うよ~~ぉ?⤴」
    とねぇ!
    オカミノファミリーの皆さんに元気な姿を見せるのも
    ファン孝行だと思いますぅ⤴
    なんて!久し振りに!生意気な事を言ってみました。

    1. さすが鋭すぎるごもっともなご指摘です。
      一応、ZoomかYouTubeを使ってミニミニLiveでもやって見ようかとは考えていますが、まあ急かさないで気長にお待ちくださいな。
      ご指摘、心に刻んでご期待に添えるよう、頑張り過ぎずに頑張って見ますからねぇ。

  2. 写真のような雪景色の中 湯船に浸かり 雪見格子から しんしんと降る雪を見ながら お酒をいただく。
    生涯一度でいいから体験してみたいなぁ〜。
    夢のひとつに加えておきましょう(笑)
    夢ばっかり増えちゃうわ( ◠‿◠ )

    1. 夢はいくつあったって邪魔にゃあなりませんから!
      抱えきれないくらい夢を描いたって、罰は当たりませんもの!

  3. 給料袋の封を開け帰るとはお父さんも勇気ありましたねぇ。しかし、帰宅してからじゃぁ絶対に許してもらえなかったでしょうから、そこは買った者勝ち!でしたね。

    1. ぼくが知る限り、お父ちゃんが決行した最初で最後の暴挙だったかも知れません(笑)

  4. ヤマもモさ〜ん、ナイスなプッシュ⤴️
    オカダさ〜ん、待ってますよぉ(^^♪

    1. そうですよねぇ。
      一応怠け者なぼくですが、そろそろボチボチ何とかしなくっちゃと思っているんですけどねぇ。

  5. 「雪花火」
    ありがとうございます。
    情景が浮かんできます。

    まさかとは 思いますが
    黄色い「雪花火」をポチッとなとした人はいないですよね。
    わたしだけですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です