昭和がらくた文庫100話(2019.03.28新聞掲載)~「百十二年前の恩人」

明治40年、1907年。

ニュージーランド(以下、NZ)の盲目の女性、ミス・アナ・リディア・ウイリアムスから、当時の英貨300ポンドの大枚が、英国聖公会を通じ、岐阜聖公会訓盲院(森巻耳氏と英国人聖公会伝道師A・Fチャペル氏により開設=現、岐阜県立岐阜盲学校)に寄贈された。

当時の中日新聞より。左上の写真が設立当初の岐阜盲学校。

当時の英貨300ポンドとは、お寺の本堂が8棟も建った大金であったとか。

 今から22年前、NZ大使館から、一本の電話がぼくに。

「岐阜盲学校の100年史に記される、多額の寄付をした、NZの盲目の女性の消息を調べて欲しい」。

そう盲学校から大使館に依頼が。

しかし本国へ照会するも、100年史に記された、「NZの盲目の女性、ミス・ウイリヤムス」だけの情報では、いかんせん消息が知れようはずもない。

そこで名古屋に住むぼくに白羽の矢が。

岐阜盲学校を訪ね、さらに詳細が聴きとれないか。

そして予てより、NZの絶滅に瀕した飛べない鳥カカポのプロジェクトで、NZに多くの友を持つぼくのルートで消息調べを手伝ってもらえぬかと。

半年ほど過ぎた頃。

郷土史家シビル・ウッド女史の著書に記された、盲目の女性に辿り着いた。

それがニュージーランド北島の東海岸、ホークスベイのテ・アウテに暮らした、盲目の女性リディアである。

右がリディア、左は私設看護婦で生涯の友となったナース・キース。

彼女の父サミュエルは、大きな農場を経営し、マオリの大学も設立した名士。

長女であった彼女は、父サミュエルが1907年3月に身罷ると、多くの遺産を相続した。

熱心な英国聖公会の信者であったサミュエルは、広大な地所の一角に教会を建て、自らも司祭補を務めた。

そんな父の影響を受け、彼女は英国聖公会から世界中に派遣された、伝道師が記す会報誌の熱心な愛読者だったそうだ。

そして日本の岐阜市に、盲学校が開設されたことを知った。

彼女は、共に盲目と言うだけの繋がりだけで、相続した遺産の一部を岐阜盲学校へと送金したのだ。

当時のヘラルドトリビューン紙より

日本や岐阜を、一度も訪ねることも無く。

当時の岐阜新聞より

今から112年前、彼女の博愛の精神は、9,000㌔の海を渡った。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「昭和がらくた文庫100話(2019.03.28新聞掲載)~「百十二年前の恩人」」への14件のフィードバック

  1. 以前 オカダさんからこのお話しを聞いた時から 白杖を持った方に目がいくようになりました♡

    1年くらい前から 通勤中 新岐阜駅前で 白杖を持った 女性と出会うんです 

    1人で 横断歩道を2箇所渡り 近くのビルに入っていかれるんですが、時々 信号が黄色なのに渡ろうとされるので
    『 危ないですよ〜 』と 声をかけます  
    毎回 ハラハラ ドキドキで 見守っているだけですが ちゃんと ビルの中に入っていかれると ホッ!❣

    自分も ぶつからないよう 
    GO !GO! 出勤  (灬º‿º灬)♡

    1. 勇気をもって白杖を持たれた方にお声がけをなさるなんて、とっても素晴らしい事です!
      やっぱりハートさんだけあって、どんな時だってハートフルなんですねぇ。

  2. 私もハートさんの様な場面
    中々勇気のいる事だと思うます。
    でも、勇気を出して声を掛けさせて頂きたいと思います。
    でも!心配なのは「余計なお世話」だと思われると
    ショック!かも?
    コロナ前の「岐阜アソシア」のオカダさんライブ
    フロアー一杯のファンの方達、大盛況でしたねぇ!

    1. ちょっとした勇気こそが、ブラインドの方々にとっては、一縷の光明でもあるんだと信じて、ぼくもそう務めるつもりです。

  3. 確か、朝日新聞でもこれと同様の記事を見た記憶があります。オカダさんが深く関わってみえたのですねー!
    そろそろオカダさんもどこかでラジオ番組?のお声はかかりませんかあ?

    1. 朝日新聞さんも取材して下さっていましたぁ!
      でも中々、電波には載れませんねぇ。

  4. 何人分の人生を送ってきたの?って言うくらい、沢山のお仕事に携わって来たのですね。新聞に載っている写真のオカダさん、若〜い⤴️ヒゲ生やしてるぅ⤴️

  5. 『余計なお世話…』な〜んて思われないですよ。きっと( ◠‿◠ )
    例え その場で「あっ大丈夫ですから」って言われたとしても 心の中では 「気にかけて貰えた 。見ててくれる人がいた」って思ってると思います。
    私は 子供達が小さい頃 外出先でパニックを起こした時など 誰も…
    だから 私は声をかけるようにしてます。「大丈夫ですか?」と。
    難しいんですけどね! 時として 声をかけずにそっと見守るのも勇気ですから。

    1. ぼくたちは障害者の方たちから遠ざけられ、学生時代を過ごしたため、障害者の方たちにどう向き合ったらいいのだろうと、人間としての感性よりも動物的な本能よりも、まず頭の中で一番良い対応の仕方はどうすれば良いのかと、ついつい考えが先に立っちゃって、臨機応変な対応に遅れを取ることがあるんじゃないでしょうか?
      ぼくがアナ・リディア・ウイリアムスさんの取材をしていた頃、NZに1校しかないオークランドのブラインドスクールに伺ったことがありました。
      そこには周辺の小学校から1週間交代くらいの割合で、健常者の小学生がブラインドスクールに通学し、ブラインドスクールの生徒が健常者の学校で授業を受けるという、エクスチャンジ・プログラムがあり驚かされたものでした。
      なぜなら、ブラインドスクールで学ぶ生徒さんたちが一日も早く、地域社会に入っていけるようにと言うことと、健常者の学校の生徒たちも障害者の方たちと普通に接することで、互いの理解を深めるというシステムだったからです。
      これが車いすのためにスロープを作ったりと言う、ハード面だけのバリアフリーではなく、本当の心のバリアフリーだとひどく感心させられたものでした。

  6. 良い対応 それは 本人のみぞ知る ですね(笑)。我が家で言うなら 二人の息子達。
    私も未だに 手を替え品を替え…みたいに向き合ってますもん( ◠‿◠ )
    本当は違うのに しょうがねぇなぁ〜って感じで私の言う事を聞いてくれてる時もあるはずです。
    あと 地域の学校との交流は 小学生の頃からやってましたよ。40人の中に私と息子二人で入っていくんですから それはかなり気合いを入れてやってましたね(大笑)

    1. そうですかぁ!
      40人の中へ入って行くお母さんと息子さんもそうでしょうが、お二人を迎える40人の生徒たちもやっぱりいつもとは異なる緊張感のようなものが漂っていたんでしょうねぇ。
      でもそう感じるのは、子どもたちじゃなくって、周りの大人たちの感想かも知れませんが・・・。

  7. この前の通勤中に出会う彼女に 『危ないですよ!』って 声をかけた時 『あっ!いつもありがとうございます!』って 言われた事もあったので 本当に危険な時だけ 声かけをします。  

    駅近くは 携帯を見ながら下を向いて歩いている人が本当に多くて 点字ブロックを頼りにしている方には 危険がいっぱいなんです。

    白杖を上げている方は 助けを求めている方らしいですよ ❣️   

    今の職場で 障害者の方と 週に1〜2度 短い時間ですが仕事をしています
    (◠‿・)—☆ 

    コロナ禍になる前 各務原の特別支援養護学校に行き 皆さんが授業をしている姿や作品を見てきました ( ◜‿◝ )♡

    みんな とても素直で優しく 愛らしかったです  個性のある作品がいっぱい (◍•ᴗ•◍)❤

    いつか いつか 私もボランティア ❣️
    老人福祉施設や老人ホームに入居されている方達の 洋服のお直しをさせて貰えたら !! って (人 •͈ᴗ•͈)

    残りの人生 少しだけ 少しだけ 誰かの為に なんて !! 思えるように 
      (*˘︶˘*).。*♡

    こう思えるようになったのも 
    オカダさんと巡り合え オカミノファミリーと出会え
    そして 我が家の 小さな怪獣君達と巡り合えたから ♡  

    1. ボランティアの洋服のお直しなんて、素敵なプランですねぇ。
      きっと思い出が一杯詰まった、捨てられずに仕舞い込んだままの洋服とかおありでしょうから、そりゃあもう喜ばれることでしょうねぇ。
      ぜひぜひ実現できるといいですねぇ。

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