昭和がらくた文庫61話(2015.12.27新聞掲載)~「年忘れ!世紀越えカリーパーティー」

大晦日から新年のご来迎を、インドの地で迎えた。

写真は参考

二十世紀が二十一世紀に変わるその瞬間。

しかも釈迦成道の地、インド・ビハール州ブッダガヤに、新聞の取材で訪ねた2000年の大晦日。

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それを遡る20年前。

ブッダの里にある日本寺の青年駐在僧が、2年の任期を終えた。

彼は帰国に際し、世話になった貧しいマスティープールの村人らに、お礼としてカレーを振舞った。

それから20年。

当時子供の頃に、彼が振舞ったカレーを食べたという少年が大人となり、ブッダの里の土地を彼に寄進したいと願い出た。

そこに寺や宿坊を建て、もう一度子供の頃のような、夜通し飲んで食べてのカリーパーティーを開いてくれないかと。

1杯のカレーが紡いだ不思議な縁。

寺院建築が始まりカリーテンプルと名付けられた。

その竣工披露を兼ねた、世紀越えのカリーパーティーの、取材に出向いたというわけだ。

大晦日のこの夜、チキンカレーが無料で振舞われると聞き付け、隣村からも約千人近くの老若男女が、カリーテンプルを取り囲んだ。

闇に浮かぶ群衆は、無秩序に道路へと鈴なり。

開場時の混乱を想うと心が騒いだ。

そんな心配をよそに、開場となった。

するとどうしたことか。

中庭には300人ほどが整然と列を作り、村人たちが地べたに座り込み、バナナの葉の皿に、カレーが盛り付けられるのを、嬉々として待ち構えているではないか。

しかもいずれも、女子供と老人ばかり。

30分ほどで客が入れ替わった。

するとまたしても、女子供と老人ばかりである。

入口に(たむろ)し焚き火に当たる男に問うた。

すると「女子供や老人に先を譲るのは、当たり前だろ?元気な男共は後でいい」と。

入場整理券も無ければ、物々しい警備員もいない。

だが我先にと先を争う混乱など、何一つ無かった。

ヒンドゥー教徒にとって釈迦は、9番目の神とか。

一見貧しそうに思えたインドの村人たち。

ところがどっこい、ぼくなんぞ足元にも及ばぬほど、慈悲深く心豊かで偉大であった。

村人たちの年忘れ。

世紀越えカリーパーティーは、21世紀のご来迎まで続いた。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「昭和がらくた文庫61話(2015.12.27新聞掲載)~「年忘れ!世紀越えカリーパーティー」」への8件のフィードバック

  1. カレー大好き!
    我が家のカレーに入れる肉は「合挽ミンチ」を使います。
    何故か?
    小学校の頃、家庭科の授業の時に・・
    各グループでカレーを作る事になり
    皆さんご存知、僕の初恋の相手「真理ちゃん」が一言、言ったんです。
    「家はねぇ!お肉はひき肉を使うの!」
    ハナ垂れモもっちは「ひき肉」なんて初めて聞く言葉でしたが
    お調子者のもモっちは、二つ返事で「うん⤴ひき肉大賛成!」
    月日が経って嫁にはカレーの肉は、合挽ミンチを入れてもらっています。
    エエ話やぁ~ん⤴

    1. いわゆるキーマカレーっぽい、食べやすそうなカレーじゃないですかぁ!
      「真理ちゃん」キーマカレーってぇやつですか!
      ちょっぴり初恋の甘酸っぱさが感じられそうですねぇ。

  2. 一日3食カレーでも大丈夫と言う人もいるでしょうが、朝からカレーはちょっと・・・。2日間続けては行けます•̀.̫•́✧

    1. ぼくは朝からカツカレーでも平気です。
      毎日新聞の取材で3回のべ3週間ほどインドに滞在しましたが、もちろん毎日3度ともカレー三昧でした。
      しかしどれ一つとして同じカレーではなく、それはそれは奥深い美味しさでした。
      お高いナンよりはほとんど食べることなく、庶民的なチャパティー、そしてもう一つ田舎風のロティ。
      いずれも忘れられない美味しさでした。

  3. 笑顔いっぱいの写真 いいですね( ◠‿◠ )
    美味しいものを食べるとみんな笑顔になるんですよね。
    あと何より 二十年前の行いが人々の心に残り また笑顔にする事が出来る。
    凄い事ですよ。
    ずっとずっと語り継がれていくんでしょうね。

    1. とにかく無秩序のような光景ですが、連綿と受け継がれて来られた崇高な秩序の存在に、心震えたものです。
      かつての日本の様に。
      今の日本はとても恥ずかしい限りですもの。

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