昭和がらくた文庫60話(2015.10.22新聞掲載)~「新聞配達の符丁(ふちょう)」

-早朝の住宅街。

(おびただ)しい数の赤色灯。

写真は参考

規制線の向こうには、自転車が倒れ新聞が散乱。

傍らには、腹から血を流した男が、突っ伏したままだ。

「山さん。これ見てください!」。

若い刑事がベテラン刑事を呼び止めた。

そこには血で書かれた「ト」のような文字とも、矢印にも見える不思議な模様が描かれ、右上に「・」のような印。

「ダイイング・メッセージか?」。

「ガイシャの身元は、毎朝新聞販売店の配達員、奥田健太32歳」。―

これは今から15年前。

TVキー局のドラマプロデューサーに紹介されたプロダクションで、先輩シナリオライターの名前を借り、サスペンス物のシナリオを書いていた時代の、ネタ帳の抜粋だ。

写真は参考

それにしても当時は、朝から晩まで明けても暮れても、人の殺し方と犯行の動機、そして謎解きばかりを考えていたものである。

そんな頃、少しでも生活の足しになればと、新聞配達の見習いを志願。

写真は参考

早速先輩の後から配達先を巡った。

先輩によれば、配達ルートを頭に叩き込むまでは無給とか。

そう聞かされ、早やくもその過酷さに初日から挫折。

その時のことだ。先輩が手にしたメモ帳に、不思議な符丁が配達順に、描かれている事に気付いたのは。

参考資料

それが先の奇妙な文字だ。

片仮名の「ト」のやや右上に「・」が一つ。

つまり一軒先の、右隣の家を指すものである。

二軒先なら「・・」、左側の二軒先なら「ト」の左上に「・・」。

符丁が記された手帳を、順に手繰りながら巡れば、その区域の配達が完了すると言う優れ物。

符丁を手掛かりに、主人公が謎を解き明かし犯人を追い詰める、そんな設定だった。

確かに警察官や新聞記者を始め、それぞれの業種において様々な符丁が存在している。

ましてや一つ屋根の下で暮らす家族にも、他人では伺い知る事の出来ぬ、その家族だけの、府庁ならぬ家言葉が存在する。

しかしそれこそが、家族が家族である証かも知れない。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「昭和がらくた文庫60話(2015.10.22新聞掲載)~「新聞配達の符丁(ふちょう)」」への6件のフィードバック

  1. なんかさ~ぁ⤴
    パトカーとか警察官見ると何も悪い事してなくても
    「ドッキ!」っとするよねぇ!
    えっ?私だけ・・
    私のポリシーは!
    人の前ではイイ人で、陰に隠れれば分からないように悪事を重ねる!
    どぉよぉ!
    みんな、くれぐれも冗談だからねぇ!
    悪い事する時は黙ってするから・・

    1. 違う違う!
      悪いことは黙ってしたって悪い事ですよ!
      そこんとこ、ヨロシク!

  2. え〜!サスペンスドラマのシナリオも書いてたの〜?
    もしかしたら当時見てたかも⁈
    謎解きだけならまだしも 一日中 犯人側の事も考えてるなんて…(怖)
    作家さんって 頭の中の引き出しが無数にあるだろうし 切り替えが速そう。
    尊敬しちゃう( ◠‿◠ )

    1. まぁ、ぼくは遣いっ走りのような、ゴーストライターでしたから、まだ100均の使い捨てライターの方が、どれだけスグレモノか!
      でもそれもいい経験となりました。

  3. 若い頃はサスペンスドラマが
    好きで1週間に1回だけ見てました。
    けれども 今となっては 怖すぎて よく見ていたなぁ〜と思います。

    子供の頃は
    田舎の(家の)郵便ポストには 
    チョークで新しくチュウと書かれると新聞配達の人が変わったんやね〜とゆう話になってました。(チュウは中日新聞です)

    1. しかし人の家のポストにチョークで符牒を印すとは!
      なんとも大胆で大らかな時代でしたよねぇ。

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