昭和がらくた文庫45話(2014.8.28新聞掲載)~「三角ベースの野球ゴッコ」

昭和半ばの子どもたちの野球は、本格的な一塁二塁三塁本塁のダイヤモンド型ではなく、二塁の無い一塁三塁本塁の三角ベースだった。

参考イメージ

だから1チーム9人の「本格的な野球」ではなく、最低1チーム3人とバットにゴムボールさえあれば、いつでも「野球ゴッコ」の始まり。

つまり守備側は、一塁と三塁に投手の3人。

当然一塁手と三塁手は、外野も兼務することになる。

しかも捕手がいないので、打者はボールを見送ったり空振りすると、自ら捕りに走って投手に返球すると言うお粗末さ。

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出塁すると盗塁なんてやりたい放題。

だって投手の牽制球で刺されることなどまず有り得ないのだから。

しかしそれが災いし、打者がわざとボールを空振りし、本塁後方へとボールが転がる隙に、振り逃げのランニングホームランを決める荒技も飛び出した。

いずれにせよ素手がグローブ代わりで、投手は下からの女投げが基本だ。

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「もう一人おったら5人やで、野球出来るのに」。

その日は人数合わせに手こずっていた。

さすがに1チーム2名では、如何ともしがたい。

あと1人いれば、敵味方なく順に交代で入れ替わり、不足分を補えば済む。

「あんたら、面子が足らんのやろ!わたしが入ったろか?」。

そう言って、縄跳びに講じていた一人の少女が現れた。

まるで魔法使いサリーに登場する、男勝りで姐御肌の「よし子ちゃん」そっくりの同級生のK子ちゃんだ。

「お前、バット振ったことあるの?」。

「そんなもん、その棒っ切れ振り回しゃええだけやろ!チョロイチョロイ!お茶の子さいさいや」。

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ともかく、背に腹代えられぬ思いで、K子ちゃんを入れた5人で野球ゴッコが始まった。

「さあK子、打てるものなら打って見ろ!」と、ぼくが女投げで投じた第一球。

K子ちゃんは軽々とバットを振り回し、ボールはあっと言う間に、超特大ホームラン。

誇らしげな顔のK子ちゃんとは裏腹に、ぼくらは日が暮れるまで、たった一つきりのボール探しに躍起になったものだ。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「昭和がらくた文庫45話(2014.8.28新聞掲載)~「三角ベースの野球ゴッコ」」への8件のフィードバック

  1. 昔の悪ガキ達は身体を動かして真っ黒に日焼けしてた。
    自分達で都合の良いルールを決めて・・
    まぁ~⤴今の子供達からすれば、幼稚だったかも知れません!
    でも、十分楽しかった。
    今の時代空き地も無いし熱中症になるからと
    クーラーで涼やかな部屋でゲームして・・
    ある意味!
    我々昭和時代の悪ガキ共の方が思い出に残る夏休みを送れたかも?
    知れません?

    1. 確かにキックボードとかもありませんでしたものねぇ。
      そう言えば、公園で親子連れが何組もバドミントンにこうじている姿を見ました。
      これもオリンピックの影響でしょうかねぇ。

  2. え〜!二塁がなかったの〜⁈
    み〜んなK子ちゃんみたいに特大ホームラン打てちゃうでしょう( ◠‿◠ )
    ブログを読みながら 小学生の頃って男の子は どんな遊びをしてたっけ?って思い出そうとしたけど全く…。
    ただ 放課の時間にドッチボールをして男の子にボールをバシバシ当ててたのを思い出しちゃいました(笑)

    1. そうそうドッジボールもよくやりましたねぇ。
      ぼくはいつだって逃げ回ってばかりだったような(汗)

  3. 子供の頃は、熱中症になるなんて事は無かったから外で思いっきり遊べましたよね。その変わり、光化学スモッグとか雨に濡れると放射能で頭がハゲるとか言いませんでした?あっ!!

    1. 熱中症はそんな言葉すらありませんでしたが、「日本脳炎」やら「日射病」とか「狂犬病」とかがありましたよねぇ。

  4. そうそう、ハンドベースと言ってました。ボールはフニャフニャのゴムボール。駄菓子屋に売っていました。
    前にも書きましたが、このボールを地面に当てて行う「ハンドテニス」もよくやりましたが、これの名前はなぜか「チョック」と呼んでいました。4面でタテ・ヨコ・ナナメでやるのは「元大中小」でした。このいわれについては以前書きましたね!

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