今日の「天職人」は、三重県伊賀市島ヶ原の「はさめず職人」。(平成24年1月28日毎日新聞掲載)
あんさんそんな器用なら 粟稗やろと箸先で 難なく摘み取れるやろ それでもこれは無理やろな 「箸で挟めんもんはない」 えらい大見得切りよって ほなこの醤油挟んでか 無理を承知の「はさめず」を
三重県伊賀市島ヶ原、明治28(1895)年創業の、丸長「福岡醤油店」。二代目はさめず職人の、川向友宏さんを訪ねた。

「『はさめず』が何かは置いといて、いっぺん食べとくなはれ」。
炊き立ての一膳飯に、醤油が振り掛けられた。

「これが『はさめず』やがな。その昔は貧乏で、おかずもよう拵えれん。昔の京都の人らは、醤油かけて喰うたんやさ。『おおい、(箸で)はさまれへんおかずくれ』ゆうてな。京都人はいっくら貧しいても、気位だけは高いやろ」。友宏さんが、悪戯小僧のように笑った。
友宏さんは昭和9(1934)年、料理旅館の長男として誕生。
国民学校高等科を出ると、昭和23年福岡醤油店に入社。
「福岡長太が、師匠でんにゃ。それで今も、屋号は○長、福岡醤油店ですんさ」。
親方に付き、醤油作りを学んだ。
「大豆を蒸して、一晩止めて。種糀を振り木箱に盛り込み、室の中で丸3日。上の棚は、下に比べたら温度が高い。それぞれに顔があるで、この子はこの温度でええやろかと。下の棚からは、『はよ上げてんか』と、ゆうて来よるし」。

蔵人は大豆の声を聞き分ける。
次に大桶の塩水に浸け込み、櫂で攪拌を繰り返す。

「仕込んだはなは、1日1回。顔見ながら手入れせんならん。7~8ヶ月で発酵し、原料が上がってくるで、今度は1日2回ほぐすんやさ。最初は柔こいけど、発酵するとかとなる。そして仕上がる頃には、また柔こうなる」。
それを絞り袋に入れ、舟の中へ。
100年以上前から使われる、木製のキリン圧搾機(直径30センチの丸太が、キリンの首に見えることから)で搾り出す。

延べ一年半の歳月を費やし、真っ黒なはさめずがこの世に生まれ出でる。
「修業中は自転車に積んで、売りあるくんやさ。ところが大手のメーカーに押されて厳しい。どないしよかと思とった。そしたら『お前、日本一美味い醤油やぞって気で、販売しとんか?』と、親方から言われましてな」。
親方はその場で、半紙に「忍耐」と記した。
そして起床時と終身時に、必ずそれを見ろと。
「今思たら、そのお陰で一人前になれましたんさ」。
21歳の年に、英子さんと結ばれ、一女を授かった。
それから5年後。
「跡継ぎが無かった親方から突然、『お前やったら出来るで、後たのむわ』と」。
友宏さんが店を譲り受けることに。
「『商売は損して徳取れ。細う長~く、牛の涎のように』って、それが親方の遺言や」。
昭和38年のことだ。
「営業で行った京都の板前に、『はさめず』の昔話を聞いたんやさ」。
これだ!
友宏さんは己の直感を信じ、旨味入り醤油に「はさめず」と命名。

昭和40年には登録商標を得た。
「付けるんが醤油。たっぷり掛けて啜り込むのんが、はさめずやわ」。
それにしても友宏さんはよく笑う。
「始終笑顔でおると、そんな気の無いもんまで買うてくんやさ」。
店中に笑い声が響き渡った。
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「天職一芸〜あの日のpoem 452」
「はさめず職人」
そういえば 卵かけご飯をしばらく食べてないです。
子供の頃にはたまご屋さんが
近くにありましたから 大きな卵の時は「ふたごかなぁ」なんて
ちょっと ワクワク してました。
そうなんですね。醤油が決めてだったんですね。
双子の卵に当たると、その日はなんだかいいことがありそうで、ワクワクしたものでしたねぇ。
君は「ソース派、醤油派」と聞かれたら
迷わず「醤油派」
勿論!目玉焼きだって醤油!
まぁ~フライはソースだけどねぇ!
そこは!ソースなんかい!
と言われそうだけど・・
でもさぁ⤴日本人なら醤油!
オイラはハーフだけど醤油だもんねぇ!
ぼくも押しも押されもせぬ醤油派ですねぇ。
トンカツだってコロッケだって、人目を憚らず醤油を掛けちゃうときもありますもの。
『はさめず』って何の事かなぁと想像しながら読み進めていくとお醤油。ネーミングもユニークだけど、付ける醤油では無くて掛ける醤油とは。ではでは、TKGにたっぷりと⤴️
TKGって?
と思ったら、なぁ~んだ!
玉子かけご飯かい~っ!
『 はさまれへんおかず…』
ん〜 なるほどです( ◠‿◠ )
そう言えば 小さい頃 ご飯にお醤油をかけて食べてたなぁ〜。今でも お醤油派ですよ。
卵かけご飯にはまって 専用のお醤油をいくつか買ったりして 味を比べたりした事も。久々に食べてみようかな⁈
なんてったって、玉子かけご飯は、昭和の立派なおごっつぉですものねぇ。