今日の「天職人」は、岐阜県高山市馬場町の「山の精進料理 料亭主」。(平成23年12月24日毎日新聞掲載)
酸いも辛いも甘い恋 苦く塩っぱい人の道 泣いて笑って浪花節 一皿盛りの五味精進 膳を彩る四季の華 ついつい見惚れ迷い箸 五味の御菜に舌を巻きゃ 我が浮沈さえ醍醐の味
岐阜県高山市馬場町で、文久年間(1818-29)創業の、精進料理「角正」。十一代目主の角竹邦雄さんを訪ねた。

観光客でごった返す雪の飛騨高山。
古い町並みを抜け、くねくねと海老坂を登る。
すると淡い灯りが燈る、古の武家屋敷が浮かび上がった。
飛び石に打ち水。
黒塀と石灯籠。
離れ座敷へと続く、苔生した内庭。
どれもが小気味よく、浮世の喧騒を隔つ。

「元は飛騨郡代の、お出入医のお屋敷でしたんやさ」。邦雄さんが、離れ座敷で迎えた。
邦雄さんは昭和22(1947)年、この家の長男として誕生。
大学の入学式を終えた後、広島県福山市でクラブの合宿一日目のことだ。
「父がクモ膜下出血で倒れたと連絡が入って。とにかく大慌てで、家に駆け戻りましたが…」。
享年42という若さで、先代が急逝。
昭和45年、大学を卒業し家業に就いた。
「それから6年、父に手取り足取り教えてもらうことも叶いませんから、祖父と板長の手付きを必死に盗み見る毎日でした」。

昭和47年、地元の三恵子さんと結ばれ、二男を授かった。
「後から知ったんですが。ここの曽祖父と、私の実家の祖母が、寺の幔幕を連名で寄贈してたようでして。同じ檀家やったんです。だからここへ嫁いだのも、宿命やったのかな」。
昭和51年、十一代目主の板長に。
「家は代々、主が包丁を必ず握ることになっとるんやさ」。

200年に及ぶ、角正精進料理の基本は、飛騨高山ならではの山の幸の吟味から。
そして代々受け継がれる、四季折々の調理法で手数を惜まず綾なす。
「素材そのものが持つ大自然の味を活かし、『甘い・辛い・酸っぱい・苦い・塩っぱい』といった五味を、味わっていただくよう調理法を工夫します。食材の色やバランスを考え、皿をキャンバスに見立てて、盛り付けるんです」。

奇を衒った演出や、華美な盛り付けなど端からご法度。
「生きとし生ける素材が持ち得る滋味。その機微を料理人が感じ取り、小さな世界の皿に盛り付け、新たな命を吹き込むんやさ」。
角正名代の逸品は、代々受け継がれる生盛膾。
木綿豆腐の水気を飛ばし、1日かけ擂粉木で擂った、ヨーグルトのような白酢。
海から離れた高山ならではの黄身酢。
これは卵の黄身を裏漉しし、酢を加えた調味料。
「海が遠い分、鮮度も落ちますから、毒消しも兼ね。それと息子が作る、向う付の胡桃豆腐。胡桃を脂が出るまで擂り、葛粉を混ぜ加熱しながら練り上げたもんやさ。他では味わえませんやろ」と、邦雄さん。

「料理屋は、衣食住すべてに気を配らねばなりません」。

そう言えば、手洗いの履物も藁草履であった。
築200年の屋敷と庭、そして洗練された家伝の精進料理。
どれもが、実に控え目だ。
しかし、だからと言って、どれ一つ欠けてはならない。
心に染入る、雅楽の調べのように。
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「わぁ、綺麗!」「う〜ん、これ美味しい!」と久しく言ってない。でも、たまにはありますよ。自分で作った料理に「おっ!なかなか旨い」って思う時。自画自賛ですが(_ _;)
何事も自画自賛で大いに結構じゃないですか!
せめて自分だけは自分を褒めてあげなくっちゃ!
精進料理
食べた事ないけど、低カロリーなんでしょうねぇ!
一度食してみたいです。
以前、韓国へ行った時、
丁度「宮廷女官チャングムの近い」
宮中料理を食べましたが、まぁ~~⤴出るわ!出るわ!
次から次へと・・・宮中料理とやらが
えっ?美味しかった?
日本人の平民には??でした。
でも、キムチは、どこの店に行っても、その店、その店の味でとても美味しかった!
宮中料理とは、これまた豪気なもんですなぁ!
もしかして高句麗の落ち武者殿ですか?
なんだか茶道の世界のような…( ◠‿◠ )
本格的な精進料理を頂いた事がないので ぜひ味わってみたいですね。
これこそ 景色や風や空間も一緒に感じながら。
勿論 その時間を一緒に過ごす人 大事です。
料理人の手に掛れば、料理も庭木や池泉を借景にした、味わい深い絵画のようなものかも知れないですねぇ。
古い街並みらしい店構え (✿ ♡‿♡)
間違いなく 飛騨のお酒がぴったなお料理 美味し〜い❣ んでしょうね
器もステキ❢ お部屋もお庭もステキ❢
あ〰〰〰 1人 家のみもそろそろ限界
•́ ‿ ,•̀ (。•́︿•̀。)
こんな素敵な所で 疲れ果てた心 癒された〜い (◍•ᴗ•◍)❤
庭で囀る鳥の声や、虫の鳴き声、そして風に吹かれてそよぐ葉擦れの音に耳を傾けながら、ゆったりとさしつさされつ!なぁ~んて、風情を極めるのもいいかも知れませんよねぇ。