今日の「天職人」は、岐阜県高山市下一之町の「昭和古民具蒐集家」。(平成21年11月11日毎日新聞掲載)
路地裏七輪秋刀魚の香 子らが縄飛ぶ下駄の音 釣瓶落としの日も暮れりゃ 袋小路にネオン花 縄の暖簾を分け入れば 鳶の法被と菜っ葉服 流しがギター爪弾けば 箸で猪口打つがなり声
岐阜県高山市下一之町の古民具蒐集家、五味輝一さんを訪ねた。

一文菓子屋で木戸銭を払い、裏町の薄暗がりへと足を踏み入れた。

するとその途端、枯れた色合いの町並みの向こうから、咽返るほどに狂おしい昭和の記憶が、津波のように押し寄せる。

「どうです?昭和の宝の山でしょう!でも周りからは、屑屋扱いでしたわ」。
昭和の古民具数10万点が、詩情豊に展示される高山昭和館。
輝一さんは、目を細めて笑った。
輝一さんは昭和13(1938)年、長野県茅野市で寒天作り農家の長男として誕生。
高校を出ると、同県畜産技術講習所へ。
翌年、畜産技術員として農協に勤務した。
「当時は牛乳の摂取量が少なく、1日で盃1杯も飲めん時代。せめて1人1合は飲めるようにって、北海道へ現金腹に巻いて牛買いに」。
7年後、東京五輪が開幕。
「世界中の大きな体の選手見て『こりゃあかん。これからは、肉の時代が来るわ』と」。
直ぐに辞表を出し、翌年から食肉について学んだ。
「食肉問屋へ無給でいいからと頼み込んで」。
昭和41年、ついに食肉店を開業。
だが、勢力を拡大するスーパーマーケットに太刀打ち出来ず撤退。
既に2年前に父を、昭和42年には祖父と妹を相次ぎ失った。
「もう借金まるけで、田畑を売って昭和43年にドライブインを始めたんですわ」。
翌年、父が入院中に知り合った弘子さんと結ばれ、一男一女を授かった。
「父の入院費が払えんで、分割払いの交渉した事務員が家内ですわ」。
それから10年、インベーダーゲームが日本中を席巻。
「これで見事に一山当ててね」。
それを元手に今度は、昭和55年にビジネスホテルを開業した。
「中学の時、父が寒天組合の事務所で宿直しとったら、夜中に一人のみすぼらしい青年が『お結び下さい』と。それから3日、自転車で3食届けてやったら、お礼にって絵を1枚置いてった。それが山下清との出逢いでした」。
それから清の原画が売りに出る度、次々と購入。
やがて大型スーパーが噂を聞き付け、催事用に清の原画を借りたいと。
放浪の天才画家、山下清展は大成功。
全国各地からも引き合いが続いた。
バブル崩壊を目前にホテルを売却。
全国に散逸する清の原画購入に充てた。
「全国各地を巡る内に、今度は生まれ故郷のような、昭和の古民具を集めるようになって」。
ある時、清の原画と昭和の古民具を併設展示したところ、これが大変な評判を呼んだ。
「8年前にこの昭和館を開業したんですわ。モノの大切さや有難味を、庶民の暮らしの中にあった昭和史を通して、今の若い者らに伝えたくて」。
諸国を巡り、失われ行く昭和の欠片を集め続けた男。
昭和に生を受けた者の、これが最期の務めだと嘯き笑った。
人それぞれ、悲喜交々の昭和史。
ここに身を置き耳を澄ませば、遠き日の母の声がする。
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つい先日、用事で高山市内に行ったのですが、ありましたワ『高山昭和館』。
でもコロナ禍の為か?今は閉館していました。
また近くの古い町並美術館には山下清氏の原画展があり「どうして高山に?」と思ったのですが、そうした、優しい縁がおありだったのですね。そして、有名なお結びのエピソードも本当だったんだなぁと思い、ちょっと誰かに話したくなりました。(^.^)
不思議なご縁が紡がれて、昭和の古の古物と、山下画伯の原画が高山に集結したのですが、その昭和と山下画伯の絵を愛した五味さんも、既に鬼籍に入られてしまっていて、昭和はますます薄れてしまうばかりです。
昭和の香りがする所は本当にいいですね…子供時分を思い出しホッコリとします。
昭和といえばTVのがらくた劇場、先日の総集編でオカダさんのトーク場面と映像が少しですが出ていて観ていて懐かしくなりました!
又、是非何らかのメディアに復帰され出演されるお姿を拝見したいのですがご予定はないでしょうか?
そうでしたか!
たとえ年号が、平成になろうが令和になろうが 自分の中では昭和の延長みたいな物。「今、昭和で言ったら◯◯年かぁ」なんて、いちいち昭和に置き換えたりしちゃってʕ•ٹ•ʔ
だって押しも押されもせぬ、立派な昭和人ですものねぇ。
「天職一芸〜あの日のpoem 345」
「昭和古民具蒐集家」
早く高山にも行けるようになると良いですね。は〜るよ来い!は〜やく来い!
これくらいの季節に歌うこの歌が
いちばん好きかもしれないです。
待ち遠しい春!
待ち遠しい小旅!
え〜! 岐阜にこんな素敵な場所があったとは!
本当!昭和の宝の山ですよ。
葛飾柴又の寅さん記念館に似てますね。
一度行った事があって ずっと「わぁ〜」って言いながら歩いてたんですよ(笑)
見学しながら 当時の事を思い出し 現在と比較して 物の大切さやありがたみ…
そう! ちゃんとわかるものなのです。
でも今は経営者が変わってしまったようですが、昔のままの展示物を基調に、工夫がなされているようです。
ぼくは五味さんがいらした頃にしか、行ったことがありませんので、最近の様子は残念ながら分かりませんが、それなりにノスタルジーに浸れると思います。
オカダミノルバスツアーで高山散策しましたが、ココには行かなかったなあ~!実はボクは単独行動で、市街地から少し離れた場所に行ってたんで、、、。
まあぼくらのバスツアーは、たいがい押しも押されもせぬ、オッサンオバハンのツアーですから、一人や二人雲隠れしようが、お構いなしでしたねぇ。
しかしどこぞへ独りでおでかけに???
何やらわけありな?
おはようございます 今朝は寒いです~!予報どおりの雪でした 今から8年位前に家内と二人で高山に行った時に行きました。一歩館内に入ればまさしく「昭和のあの日」に帰ってきたような気分に浸れますね~ 私もこのような昭和の懐かしいモノが大好きでついつい時のたつのを忘れて見入った覚えがありましたね~ 高山をはじめ全国の観光地にはやく賑わいが戻って来る事を願うばかりです
今度は「幹ちゃん」を連れて、お父さんとお母さんの昭和のあの日を、しっかり見せてあげてくださいな!
❖今日の高山 赤い中橋は雪で真っ白 ❖
杉玉にも雪がかぶり ロマンチックでしょうね (◍•ᴗ•◍)❤
冷えた身体を温めるには 飛騨牛と日本酒が1番 ❢❢ なんて事ばかり考えて散策しているから 1度も 昭和館に辿り着けていないんですね ヽ(。◕o◕。)ノ.
次回は寄り道しないで ゆるーい あの昭和を思い出しに行ってみますね (✷‿✷)
桜風を感じられる頃 花筏が見られる頃
には行きたいな〜 (✿ ♡‿♡)
もうちょっとの辛抱で、やさしい桜風がそよぎ、やがてちょっぴり切なげな花筏に逢えるはずですものねぇ。