今日の「天職人」は、三重県志摩市の「波切節燻(なきりぶしいぶ)し職人」。(平成20年9月23日毎日新聞掲載)
朝一番の号砲が 運動会を触れて鳴る 母は早よから台所(だいどこ)で 弁当作り大わらわ 蛸足ウインナー卵焼き 「おかかむすびでいいよね」と 母は鰹を削り出し タマが足下ニャアと鳴く
三重県志摩市の波切「波切節のまるてん」、三代目燻し職人の天白幸明さんを訪ねた。

大王崎の荒々しく入り組む海岸。
断崖を見下ろす突端の集落、三重県志摩市の波切。
真っ黒な鰹の燻し納屋が、秋晴れの空に一際映え渡る。


「『お前は生まれ育ちも顔も、れっきとした海賊育ちやで』って、よう親父からそう言われ続けましたんさ」。幸明さんは、潮焼けの赤ら顔で笑い飛ばした。
「もともと大王崎波切は、九鬼水軍の本拠地。鰹節の製造も盛んやって、船に積んで江戸や上方へと運んどったんやさ。ところがある時、嵐で船の到着が遅れてもうて、鰹節に黴が吹いてしもたんや。しかし黴が吹いた鰹節が、これまた何とも美味い。その偶然の産物が今の波切節やさ」。
江戸では本枯節(ほんがれぶし)、上方では荒節、鬼鰹と呼ばれ持て囃された。


幸明さんは三人兄弟の長男として、昭和34(1959)年に誕生。
「ちょうど伊勢湾台風の年やって、畳10枚積み上げた上で母に抱かれたまんま夜を明かしたらしいんさ」。
大学時代に文政5(1822)年の「諸国鰹節番付表」と出逢った。

「諸国の鰹節番付に混ざって、志摩波切節が行司の大役に記されとったんやさ。何でやろうと思って興味が沸いたんと同時に、波切に生を受けた者として天命を感じてもうて」。
大学を出ると修業のため名古屋の食品卸商社へ勤務。
昭和59(1984)年、高校の後輩であった裕美さんを妻に迎え、二女を授かった。
ところが昭和62(1987)年、母の容態が悪化。
急遽帰省し家業に就いた。
「いきなり本物の味を覚えろって、日本橋にんべんの鰹節を食べさせられて。それがまた、何とも言えん芳醇な香がして。元々にんべんの初代は四日市出身で、日本橋に出店する前、波切で修業したらしいんさ。それからも全国各地の鰹節も取り寄せては、味の特徴を研究して」。
幸明さんは、作り手・売り手・消費者が一体となった鰹節作りに腐心。

売り手の言いなりとなって安価な商品作りに流されず、波切の先達が伝え遺した本物の味と技法を守り抜いた。

波切節は一本釣りで揚がった鰹を、船ごと買い付けることに始まる。
「巻網漁やと鰹同士がぶつかり合って、内出血して品質が落ちるんやさ」。
水揚げされた鰹を背節(雄節)腹節(雌節)に捌き、魚体の節を目で確かめ蒸籠(せいろ)に並べ、ウバメガシなどの薪をくべた手火山(てびやま)で約1時間かけ一番火で燻す。

次に5~6段積みの蒸籠を上下入れ替え二番火へ。
この燻し作業を10~15回繰り返す。
そして黴付け部屋へ移して異なる黴を付け天日干し。
丸1年かけ1番黴から5番黴まで、ただただ黴付を繰り返し自然界の職人たる燻しの神に全てを委ねる。
「神殿の棟木と交差するように並ぶ装飾用の材を『かつお木』と呼ぶんやけど、それが黴付けて屋根の上で天日干しするのにそっくりなんさ」。

御餉国(みけつくに)の燻し職人は、誇らしげに自慢の逸品を手にした。
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薄味付の食べる波切節に醤油マヨネーズに唐辛子なんぞふって、日本酒をちびりちびり。オカダさんも、そう?(あれッ!!)
ちょっと火で炙ったりしたらもう最高のあてでしょうねぇ!
「波切節燻し職人」思わず舌噛みそうになっちゃいました(笑)
名前を聞くのも初めてなら こんなに大きい鰹節も初めて!
商品のパッケージに書いてあるいろんな調理方法 有難いわ〜。
どんな食感なんだろう?
なんにせよ 私もお酒の肴にしちゃうだろうなぁ〜( ◠‿◠ )
贅沢な鰹出汁は、身体の必須アミノ酸の塊で、旨味成分が豊富で、ホットするのがとってもいいですよねぇ。
ぼくもうどん屋さんの店先で、出汁の香に袖を引かれそうになることがよくありますもの。
「天職一芸〜あの日のpoem 293」
「波切節燻し職人」
鼻先をくすぐりますね。
この季節なので あらぶしとならんでいたけれどお値段についつい やわらかいほうをこうてしまいました。次回はあらぶしにしようと思います。
和風出汁は、時にはちょっと奮発したくなるものです!
おはようございます。
波切節燻(なきりぶしいぶ)し職人のお話ですね。
私は、波切節燻を、知りませんでした。ブログで、勉強になりました。
鰹節は、職人さんの手作りなのですね。
私は、実際に鰹節を、削ったことが有りません。
スーパー等で売っている削った鰹節は、見た事有ります。