今日の「天職人」は、三重県松阪市大黒田町の「びっくりうどん職人」。(平成20年8月26日毎日新聞掲載)
父と自転車二人乗り 真っ暗闇を港へと 釣り糸垂れて防波堤 獲らぬ狸の皮算用 空魚篭(からびく)提げて朝陽浴び 父と帰りにうどん屋へ 盥(たらい)のような丼の びっくりうどん腹一杯
三重県松阪市大黒田町、稲葉屋びっくりうどんの三代目、林武男さんを訪ねた。

伊勢参宮道と熊野古道へと通じる、追分からほど無い松阪市大黒田町。
「おお~い、びっくりさん。なんやもう仕舞いなん?」。
暖簾を仕舞い込もうとしている店主の背中に、客が声を張り上げた。

それもそのはず、時間はまだ昼の一時を回ったところ。
「ここ7~8年ほど前から、朝6時に店開けて昼は1時半頃まで。それでたいがい売り切れ御免やわ。昔は夜も遅まで開けとったけど、今しはバイパスやら何やら新しい道ができてもうて、人の流れも変って誰あれも歩かへん」。武男さんは親しみのある笑顔を向けた。
びっくりうどんは、祖父が大正時代に「安て、ようけあって、美味い」を信条に、洗面器のような丼にうどんを並々と盛り付けた名物だ。
「本当の屋号は稲葉屋やけど、商品名のびっくりうどんの方が名が通っとんやさ。せやで周りの者(もん)らに、子ども頃から『びっくりの倅や』って呼ばれよったし、今しは『びっくりさん』やわ。コックリサンとはちゃいまっせ」。
武男さんは昭和13(1938)年、4人兄弟の長男として誕生。
昭和28(1953)年、中学を出ると直ぐ家業に就いた。
「あの頃は丼をリヤカーに積んで、一日に50~60軒も出前せんならんのやで。自転車やと丼が重とてかなんのやさ」。
昭和40(1965)年、鳥取県出身の京子さんと結ばれ、女子三人を授かった。
「今もなぁ有り難いことに、一番下の娘が手伝(てっと)うてくれとりますんさ」。
びっくりうどんの朝は早い。
夜中の3時半に起床しそのまま仕込が始まる。
まずは鰹節と煮干で1時間半かけて出汁をとり、祖父の代から受け継がれる甕へ。
客の好みに応じ、濃い口2甕、薄口1甕が満たされる。
「そうこうしとると5時頃に製麺所から生うどんが届くもんやで、それを40分かけて湯がき、水に冷やして玉うどんを作るんやさ」。
すると間も無く一番客が、午前6時の開店と同時に姿を現す。

「朝早いお客さんは、タクシーの運転手さんやら現場へ出向く前の建設作業員やったり。人生色々やで」。
大半の客が名物びっくりうどんやカレーびっくりを次々と所望する。

まず注文が入るとうどんを温め、直径25㌢ほどの洗面器のような丼に入れる。
次にうどん汁(つゆ)にネギ・牛肉・筍・竹輪・鳴門を入れて炊き、水溶きカレー粉を加え一煮立ちさせれば、夏バテも吹き飛ぶ人気のカレーびっくりが完成。
一日に200食が、わずか午前中だけで完売となる。
「常連さんはカレー好きが多いんちゃうやろか。だから店ん中がいつでもカレー臭いんと違う?よう友達に言われるもん。『あんたが来るとカレーの匂いするわ』って」。

この店に30年勤めるという、パート従業員、木村すみこさんが笑った。
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目の前にして、ビックリしてみたいですが、悲しいかな、近頃 量が食べられなくなってしまいました(T_T) オカダさんは、どう?
ぼくも年々量は減っている気がします。
でも突然爆喰いしてしまうこともありますが・・・(汗)
凄いボリュームのうどんですねえ。昔、営業で三重県を廻っていましたが、知ってたら絶対行ってたなあ!
次回、お伊勢さん詣での途中で、ぜひご賞味あれ!!!
カレーうどん大好き。出汁でのばして作るけどなかなかうまくいかない。寒い日にはチョツとピリ辛のカレーうどんが良いんだよね(笑)
特にこんな寒い日には、格別ですよねぇ。
今日は、鍋焼きうどんにしようって決めていても、近くの人がカレーうどんを食べていると、つられてカレーうどんを頼んでしまいますぅ。
丼から溢れんばかりの具沢山と俵型のおむすびが良いですね。
知らなかった三重県の食文化の数々!
ナイスです!
ぼくも取材後に一度、お伊勢参りに向かう前に、松阪に立ち寄り、朝からびっくりカレーうどんをいただいたことがありました。
もうお腹一杯!
今晩は。
・びっくりうどん職人のお話ですね。
・カレーうどんと海老天美味しそうですね。 私は、カレーうどん大好きです。
・カレーうどんが入っている器インパクトがありますね。
どっちにしようかな?
びっくりうどん or カレーびっくり
やっぱり びっくりうどんに決〜めた!
薄っすらお醤油色のお出汁に白いうどん…
具材も少なくて。
そんなうどんがやっぱり好きなのです。
知立にも 美味しいうどん屋さんがあるんですよ。知立の弘法さんの前にある「弘法庵」。手打ち麺でモチモチしててお出汁も美味しいんです。あんまきも手作り!
久々に暖簾をくぐってみようかな⁈( ◠‿◠ )
やっぱり各地に、そんな名店があるもんなんですねぇ。
その土地の人しか知らないような。
「弘法庵」行ってみたいものですねぇ。
おもいっきりお腹をすかして、”カレーうどん+海老のてんぷら”を食べてみたいです。夏バテなんかの、モヤッとした気分が飛んでしまうかもしれません。と、思うにも『松阪へ行きたしと思えど松阪はあまりに遠しせめて岐阜県内でカレーうどんを食べたし』であります。
その土地土地に根付いたカレーうどんの名店って、きっときっとあるはずですものねーっ。
勘太郎さんのお口に合う名店が、岐阜県内にもきっとあるはずですって!
それを巡る小旅も乙なもんじゃないでしょうか?