今日の「天職人」は、三重県伊勢市の「自転車預り所」。(平成二十年一月八日毎日新聞掲載)
一本線のセラーに チェックのマフラー白い息 踏み切り越えてチリリンと 路地を彼女が行過ぎる 駐輪場の定位置に 彼女を見つけ大急ぎ
「おはよ。今日も一緒だね」 毎朝偶然装った
三重県伊勢市の自転車預かり所、小島美智子さんを訪ねた。

「おばちゃん、おおきに。さいなら~っ」。セーラー服姿の女学生が自転車に跨る。
「女の子同士でちゃんと連れ添うて帰るんやよ」。
三重県伊勢市駅にほど近い、旧道に面した一角の夕暮れ。
高校生たちは思い思いに挨拶の言葉を残し、自転車預かり所を後に家路へと向かう。
「家で買(こ)うてくれた子らの自転車だけを預かっとんさ」。美智子さんは、土間に突き出した座敷で笑った。
「学生さんは朝と夕方しか、自転車出し入れしませんやろ。一般の人らやってみい、ず~っと店番せんならんでかなんわ。それにあたしもいつ出掛けるかわからんでな」。
美智子さんは大正14(1925)年、下駄職人の家に誕生。
「父は亡くなった皇后様に、お履物を献上したほどの腕前やったんさ」。
やがて後の大妻女子大学を卒業し、戦後間もない国民学校で教鞭を執った。
昭和24(1949)年、親類の紹介で自転車店を営む小島家に嫁ぎ三男をもうけた。
「戦後間もない頃のこの辺りは、空襲で焼け野原やったんさ。ほやからして今じゃあこんなボロ家ですが、当事は周りから御殿と言われたもんやで」。

夫は自転車販売と修理に明け暮れ、美智子さんは店の奥で「小島塾」を開き家計を支え続けた。
「自分の子どもを姑に預けといてなぁ」。
その後40年に渡って小島塾は、地域の子ども達を見守り続けた。
「今の子らは気の毒やさ。私らはテスト出すにしても100点取れるように考えたもんさ。でも今はどう足掻いても100点なんてとれやん。それでは子ども等が自信を失くすばっかやさ。それが満点取れてみぃ、やれば出来るって自信が付いて、ほやったらもっと頑張ったろかってなるやろ」。
一番生徒の多い時は、一度に17人を数えたほど。
平成11(1999)年、夫が他界。
「『敗戦で捕虜になって一旦死んだはずが、命貰って還って来たんやで』が夫の口癖。黙ってポケットん中にお小遣い入れといたると、いつの間にかあれしませんのさ。近所の子らにせっせとお小遣いやって歩いて。あたしにはブラウス一枚も買(こ)うてくれやんだに」。
美智子さんは土間の片隅に片付けられたままの、修理道具を見つめた。
夫の死後、自転車販売と修理業は廃業。
その後、自転車預かりへ。
「あたしらの年金だけでは、税金さえも払ろてけやんで、子供らの自転車預かったお金を足しにせやんと」。
入り口の引き戸が開き、女子高生が引っ切り無しに訪れる。
「おばちゃん、おおきになぁ。また明日」。
口々にそう言って、冬の黄昏に染まって行く。
「時折りあの子らの籠ん中へ、俳句捻って入れといたるんやさ」。
どんな句が詠まれているかと問うと、「あかん、それは秘密やわ」。
82歳の才女は笑い飛ばした。
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おはようございます。
・自転車預かり所のお話ですね。
・通勤等で、自転車を使う方は、自転車預かり所が、有ると助かりますね。
・自転車預かり所が有ると助かります。私の足が自転車だから有難いです。
あたしも~~ぉ⤴
休もう~~ぉ⤴
又!あした~~ぁ⤴
たまにゃあ、ゆ~っくりなさってくださいな!!!
高校生の頃 地元の小さな駅前にある自転車預かり所 お世話になってました。
ほんの少し薄暗くてヒヤッとするようなコンクリート張り。ちょっとだけ半地下みたいになってたので 帰りは坂を登らなきゃいけなくて(笑) 。行きか帰りに 木箱にチャリンっと硬貨を1枚入れてた記憶があります。
外にも自転車置き場はあったけど 1度盗難被害にあってからは 早目に駅に向かい 屋内の自転車置き場に停めてました。じゃないと すぐ満車状態になっちゃうから。
行き帰りに挨拶を交わすことで 守られてるなぁ〜と思いながら 通学してました。有り難かったですね。
自転車預りのオジチャンやオバチャンって、見てないようでちゃんと見ていて、誰の自転車かってことまで覚えてるものですよねぇ。
* 駐輪場*
自転車歴 多分 50年 ❓❓
駅近くには 何処にある? 安いのは?
何時迄OK ? そんな事をわかっていないと 安心して お出かけ出来なくなりましたよね (-_-#)
20年ぐらい前から 規制が厳しくなり、お店の前もダメ❗ 岐阜駅前周辺や柳ヶ瀬周辺は あっ❕とゆう間に 撤去されちゃうんですよ 〰️ ‼️‼️‼️‼️
「 お帰り~!」と 声をかけてくださると ★ ホッ !★ としますね (*^-^*)
街中の規制は厳しくなりましたよねぇ。
ぼくもチェーンもバッサリ切られて、自転車を撤去されたことがあります。
まあ、そんな所に自転車を留め置いたぼくが悪いのですが!
撤去された保管場所まで行くのも大変なら、そこから乗って帰ってくるのも大変でした!
まさに自業自得でした。