今日の「天職人」は、名古屋市中村区名駅の「昆布問屋」。(平成十八年十月十七日毎日新聞掲載)
グツグツグツと揺れながら 土鍋の蓋を吹き上げて 真白き湯気がシュワシュワワ 秋の夜長に立ち込める 湯豆腐掬う君の頬 お猪口二杯で桜色 虫の音合わせ鍋の中 ヒラヒラと舞う出汁昆布
名古屋市中村区名駅、昆布問屋の木村昆布、三代目主人の木村守良さんを訪ねた。

「浜で空を睨みつけ、旗持ちが大きく旗を振るとそれが出漁の合図。そしたら港から一斉に昆布船が、沖へと向かってくんだわ」。例え予報は雨でも旗さえ揚がれば、雨雲を蹴散らし北の海原に青空が広がる。旗持ちは水揚げした昆布が、その日のうちに乾くと確信した時だけ、威信を掛け旗を振る。守良さんが、昆布漁の写真を指差した。

木村昆布は昭和元(1925)年創業。
先代夫婦はなかなか子宝に恵まれず、男女の養子を得た。
守良さんは昭和二十二(1947)年、親子ほど年の離れた義兄姉の下に誕生。
父四十六歳、母四十三歳の高齢出産であった。
「もう母親参観日が嫌で嫌で。だって友達から『お婆さん来とるでぇ』っていわれるもんで」。
大学を卒業すると、明治気質の父の厳命で直ちに店へと入った。
「今はこんな恰幅ですが、昔はガリッガリで。仇名も『モヤシ』。学生の頃、伊良湖岬で皆と写真撮影しとったら、私だけ風に飛ばされてまって」。
昭和四十六(1971)年、隣の西区から洋子さんを妻に迎え、一男一女を授かった。
「檀家寺の坊さんの紹介。だで、式は神前なのに仲人が寺の坊さんだわさ」。傍らの妻を見つめて大笑い。
「信号が三つとも青なら、三分で里帰り出来るんだでねぇ。嫁入りの時は、ご先祖様にお参りして、それから嫁菓子撒いたわよねぇ」。妻も懐かしげ。
昭和四十七(1974)年、二十七歳になった守良さんは良質な昆布を求め、北海道の日高・函館と昆布産地に漁師を訪ね歩いた。

「まあ今では、全体の八割が北海道産だわね」。
日高・利尻・道南・羅臼が、最も良質な昆布の産地。
「高級品は羅臼昆布で、中級が日高昆布だわ。それぞれ揚がる浜によって、等級も違ってくるでねぇ」。店内にはもちろん、一等級中心の高級昆布が居並ぶ。
「この共巻(ともまき)は、広げると昆布が船になるように出来とって、中に具材を入れて昆布の出汁をたっぷり含ませ、料理の器として高級料亭では使うんだわ」。

昆布の種類は約十三種類。それを加工した商品ともなれば、ゆうに五百~六百種類に。
「下手な品は、暖簾に掛けて置いとけん。家のお客は北海道にもあるんだわ。北海道で揚がった昆布が柳橋まで運ばれ、また北海道のお客んとこへ運ばれるんだで、運賃だけでも二倍だわ」。
昆布は陸に揚がると一斉に、大量消費地を目指す。
だから北海道と言えど、総てが手に入るわけではない。

「昆布は健気だわ。岩場に小さな根を付けて、荒波に揉まれながら葉を伸ばすんだで。日照と海水温によるらしいけど、一日で三十~四十㌢も成長するらしいで」。
守良さんは昆布を、まるで我が子のように愛おしむ。

秋の夜長のように一向に尽きる気配もない、守良さんの楽しげな昆布噺。
そこに昆布一筋八十年の、「商いに飽きない」老舗の秘訣が隠れているようだ。
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最近 オカダさんの料理ブログによく出演してる昆布ですね(笑)
海での作業、陸での作業、そして 自然とにらめっこ…
段階を踏むごとに旨味が増してくるんでしょうね。
お店では 日高昆布の名前をよく見るし調理に使った事はあるけど 羅臼昆布はまだ味わった事がないなぁ〜。
やっぱり高級な昆布は 味が違うのかな?
和食の料理人ぐらいになると、どこの昆布の出汁かって分かっちゃうのかもしれませんねぇ。
それに料亭の味の基本は、出汁に一番元手がかかっているとかって聞きますし、確かに料亭の味を推し量るには椀物だと言う食通の方も見えますものねぇ。
残念ながらぼくの舌には、そんな崇高な味覚センスは宿っていないようです(苦笑)
利き酒ならぬ利き出汁ですね。
確かに椀物って 食材とお出汁だけって感じですもの。
オカダさんって 味覚センスあると思いますよ。
でなきゃ 創作料理を作ること出来ないから。( ◠‿◠ )
またまたぁ!
嫌だなあ、そんなにおだてられちゃあ!
昆布を食べて
「よろこんぶ」
でも・・あたしの前頭部には反映されていない⤵
それが現実だぁ!!
最近一段と前頭部が・・・(涙)
あ~~ぁ⤵
と言うことは、ついに「入道」様に???
でも肝心要の、「悟り」は開かれたんでしょうか???
今晩は。
・昆布問屋のお話ですね。
・オカダミノルさんの料理に昆布が、出て来ますね。昆布出汁も有りますね。
・昆布の種類は、13種類有るのですね。沢山有るのですね。
・日高,利尻,羅臼聞いた事有りますね。