今日の「天職人」は、名古屋市中村区の「刃物商」。(平成十八年十月三日毎日新聞掲載)
トントントンとまな板の 規則正しい音がする 今日はいいことありそうだ 母の気分も上々で 今日は何だか不規則な 庖丁捌き乱れ気味 ぼくのせいかと気を揉めば 父の帰宅が午前様
名古屋市中村区名駅、料理庖丁専門の萬打刃物商(よろずうちはものしょう)、丸五庖丁店三代目店主の田中義雄さんを訪ねた。

誰もが寝静まったままの未明。
ミッドランドスクエアから、ほんのわずか東。
柳橋の名古屋駅前中央市場には、ひっきりなしにトラックが行き来し、その間を縫うように鮮魚を積んだネコと呼ばれる台車が牽かれて行く。
店先から漏れ出す、裸電球の柔らかな灯り。
大都会の片隅で、夜明け前の営みが今日もまた始まっった。
「家は市場ん中の便利屋だで、人体以外なら何でも売るよ。たまあに『ネズミ捕りあるか』とか『針金分けてくれ』って客もくるけど」。義雄さんは、脚立を椅子代わりに座した。
丸五庖丁店は、福井県武生市で庖丁職人として修業した、祖父五平が明治末期、苦労の末にこの地で創業。
義雄さんは昭和二十五(1950)年、三人姉弟の長男として誕生。
しかし義雄さんが二歳になった年、父は病で他界。
祖父と母の故ひろ子さんが、店の切り盛りに追われた。
だがそれから七年後、祖父も鬼籍に。
「当時庖丁は、お爺さんの弟子が、まだここで作っとったでねぇ」。

義雄さんは大学を出ると、母を手伝い店を継いだ。
「ぼくが知らんとるうちに『庖丁があるんだったらまな板もいる。それなら鍋も』って。次から次へ、調理道具が増える一方」。
何種類の商品があるかと問うたが、首を傾げた。
「でもさあ、最近の百円ショップは、本当にようやるなあって感心するわ。家なんて鍋の柄一本でも百五十円~二百円はするのに。あそこは鍋そのものが百円だもんねぇ」。
毎朝五時の開店。夕方五時まで、毎日十二時間の営業。
「昔馴染みの県外の客が、たまあに来るもんだで、夕方まで店開けとんだわさ。他所はみんなだいたい、昼で仕舞いだわ」。
昭和五十九(1984)年、中区大須出身の由美子さんを妻に迎えた。
「子供もおらんで、夫婦二人で安気にやってますわ」。妻を見つめ微笑んだ。
結婚から八年。女手一つで、家業と家族を支え続けた母が他界。時代は平成へと移ろい、庖丁人の世界にも変化が生じた。
「まあ最近は、魚もおろせん板前が多なって。バイトでも出来るようにって、刺身でも加工場でもう切ったるんだで、後は盛り付けだけ。昔のように庖丁を使い分ける板前も減ってまって」。
棚に収まる数十種類の庖丁。
出刃、薄刃、柳刃、蛸引き、鱧切り、鰻割き。

いずれの和庖丁にも丸に五の刻印。
「この鰻割き庖丁なんか、地方によって形がみんな違うんだて」。
名古屋型は刃渡り五㌢程の小型。
大阪型は柄のない切り出し小刀。
東京型は薄刃で長く、京都型は鉞(まさかり)型とか。

土地土地で水揚げされる魚と、その土地の流儀や捌き方で庖丁も異なる。
「旨い」を極める板前は、己が職人魂を庖丁の切先へと委ねる。
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おはようございます。
・刃物商のお話ですね。
・色々な種類の包丁が有るのですね。
・鰻割き庖丁は、地方によって形がみんな違う事知りませんでした。勉強になりました。
・包丁も色々な素材(セラミック等)が、有りますね。
・プロの料理人(地元の人)も包丁を、買いに来るのかな?
ブログを読んでから 我が家には何本の包丁があるんだろう?と思い 確認してみたら4本ありました。
でも 結局は1本の包丁だけで調理してるんです。自分の手の大きさに合ってるからなんですけどね(笑)
スイカ用包丁があるぐらいだから ちゃんと使い分けすれば 食材も喜んでくれるんだろうなぁ〜( ◠‿◠ )
分かりますよーっ。
家のお母ちゃんなんて、嫁入り道具の菜切り庖丁一本で、何から何まで切ったり、お餅の黴をこそいだり、万能でしたよ。
庖丁の柄なんて、腐ってしまって、柄だけお父ちゃんが取り替えていたものです。
包丁!
うん~~⤵
私は不器用なんで、包丁で果物等
情けないけど、剥くのが苦手で!
全く果物の原型が無くなります(汗)
リンゴなんて、剥いている途中、色が変わって茶色になって・・
しまいには、指がつります。
剥けるのはせいぜい、バナナでしょうか!
あっ!一つあった!ピーラーでジャガイモの皮むき!
良かった!出来るわぁ~~⤴
オカダさんのように、料理上手になりたいもんです。
ぼくは料理上手じゃなくって、料理の下手の横好きですって!
中央卸売市場には、駅で映画を観る時
車を駐車しに行くのですが
駅前の華やかな感じと違って職人の
街ってかんじでいいですね
包丁はアマゾンで貝印のものを二千円
で買って使ってますがよく切れますよ
20年くらい前までは、研ぎ石をもった
おじいさんが、どこともなく現れて
包丁から農作業で使う鎌などピカピカに
研いでくれたものでしたが
(お礼は2000円)
どこに住んでいるかわからない
おじいさんが現れなくなった現在は
ネットで買って
切れなくなったら、また買うという
生活になってしまいました
刃物の砥ぎ師さんやら、かけつぎ屋さんやら、昔は町を巡回してくれてましたねぇ。
しかし使い捨ても、考えモノですよね。