今日の「天職人」は、三重県鈴鹿市の「小女子(こおなご)屋主人」。(平成十八年三月二十八日毎日新聞掲載)
おぼろ月夜が明ける前 神々住まう海原を キラキラ揺れて小女子が 浅き春連れ渡り来る 鼓ヶ浦(つづみがうら)の砂浜は 年に七日の白一面 釜茹で揚げた小女子も 春の陽射しを待ち侘びる
天保十三(1842)年創業、三重県鈴鹿市白子やまちょう水産の七代目、尾崎好宏さんを訪ねた。


「小女子漁は、一年の内で今の一週間が勝負なんやさ。一日過ぎるだけで、大きなってしもて。あっという間に、商品価値も下がってしまうんさ」。好宏さんは茶請けにと小女子を差し出した。
好宏さんは昭和二十二(1947)年、長男として誕生。
高校を上がった昭和四十(1965)年、父と二人の叔父が切り盛りする、家業の下働きを始めた。
「中学の頃から休みになると、嫌やっても手伝わされたもんやさ」。
二月末頃から五月初旬までと、小女子漁の期間は短い。
「夜が明ける頃、取れたのが『青口』。極上もんや。せやけど、水温が高いと『腹赤』ゆうてなぁ、腹に赤い筋が入るんやさ。油気が出て味も落ち、値段は三分の一」。

小女子の生態は不思議だとか。
「水温の低い方へと、落ちて行くんやでなぁ」。 海面の水温が上昇する初夏になると、小女子は一斉に鳥羽の深みへと身を寄せ、冬場の到来を待つ。そして煙草大の成魚になり、水温が下がると、再び伊勢湾を北上。
一月頃にこぞって出産を迎える。一.五~二㌢程度に成長した稚魚が、最も商品価値を高める。
市場で「青口」を見極めて競り落とし、蒸篭(せいろ)に均等に敷き詰め十段重ねで釜の中へ。
「あんまり鮮度が良過ぎると、茹でたら真丸んなってしもて、商品価値が落ちるんやさ。せやでそこを見極めんとなぁ」。
七~八分茹で上げ、砂浜で天日に晒す。

波打ち際まで数十㍍に渡り、真っ白な小女子が天女の衣のように敷き詰められる。
「手入れ(竹製熊手)で、きあらいで(だまにならぬよう均等にならす)なぁ」。
かれこれ七年。下働きもいつしか、一番の働き手へ。そんな頃、姉が隣で営む雑貨屋に、手芸用品を求めに一人の娘が訪れた。
「暇やと姉んとこで、店番しよったんさ。そいで知りおうてなぁ」。好宏さんは、悪天候で漁が休みになると娘を連れ出した。
昭和四十七(一九七二)年、銀行勤めだった喜代子さんと結ばれ、一男一女を授かった。
「最初はこんなもん、地元の人等が買うてくなんて、思っても見んかったんやさ」。
昭和五十五(1980)年、店先に煮干と海苔を並べ、喜代子さんが小商いを始めた。
「遠方に嫁いだ妹に、煮干やら小女子やらを、ちょっとした化粧箱に詰めて送ってやんたんです。そしたら妹から『えらい煮干も格が上がったなぁ』って笑われて。それからやわ『お遣いもんにしたい』ゆうて頼まれる様になったんわ」。
内助の功、喜代子さんの一工夫が、普段使いの塩干物を、産地直送無添加自然食品として、贈答品の上座へと押し上げた。

「まあこれ抓まんでみ。今朝水揚げされた小女子の釜揚げやで。一年の内でも今しか食べられやんで」。
天日に晒される前の、ふかふかとした何とも言えぬ食感が広がる。
まさに極上。
神々住まう伊勢の海から贈られた、春一番のおご馳走(っつお)。
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これは❓シラスとは違うんだね。小女子としらすは一緒かと思ってた。
どちらにしても真っ白な小さい魚を口いっぱいに詰め込んでモグモグほんのり香る塩味が美味しいんですよね꒰⑅ᵕ༚ᵕ꒱˖♡
新鮮な物は、それだけでご馳走ですよねぇ!
おはようございます。
・小女子(おなごや)主人のお話ですね。
・小女子釜揚げ美味しそうですね。
・小女子は、職人さんの手作りなのですね。
鮮度等見極めが、難しいのですね。
・私は、ちりめんじゃこ好きです。
ご飯にかけても良いですね。
・私は、生のしらすは、食べた事が、有りません。
水揚げされたばかりの小女子な釜揚げ!
何にもつけないで「いただきま〜す」でしょう。
至福のひとときになっちゃいますよ( ◠‿◠ )
小女子の佃煮も美味しいんですよね〜。
海からの贈り物 ありがたや。
海や山からのご馳走は、堪りませんものねぇ。
子供の頃、魚を食べると必ずと言っていいほど小骨が喉に刺さる子でした。ご飯を丸飲みしたりして小骨を取るのに四苦八苦⤵️そこへ行くと、小女子は丸ごと食べられる魚。最高⤴️
小魚って骨を案ずることも無くって、丸ごと食べられるから、ズボラなぼくも重宝しています。
小女子では、ありませんが!
以前バスツアーで静岡の清水港で
シラス丼を食べました、半分釜揚げ、もう半分は生で
うまぁ~~⤴かったぁ!
子供の頃、ご飯に「ちりめんじゃこ」のせて、醤油かけて・・
後「ネコまんま」カツオ節に醤油かけてよく食べていたなぁ~⤴
ホント!昭和人⤴
でもそんな素朴なご飯って、メッチャ美味しいですもの!