今日の「天職人」は、愛知県常滑市の「醤油団子屋」。(平成十七年五月三日毎日新聞掲載)
今は名残の土管坂 煉瓦煙突役目終え 青葉の梢鳥も鳴く 古窯(こよう)常滑五月晴れ 炭火に爆ぜる溜りの香 道行く人の足を惹く 我も一串みたらしを 常滑焼きの団子茶屋
愛知県常滑市で団子茶屋を営む、村田昌弘さんを訪ねた。

赤茶けて滑らかな、土肌が特徴の常滑焼。日本六古窯の中でも、最も古い歴史を持つ。 「『何で常滑には、小さいカラスがおるんか』って、よう言われただあ。そんだけ昔は窯元が多て、煙突から真っ黒な煙が立ち昇るもんだで、雀がカラスみたいになってそ」。 昌弘さんは、紺の作務衣姿で紺地の手拭を頭にちょこんと載せ、大きな身体を揺らしながら笑った。
元々村田さんは、祖父が創業した土管の窯元の二男坊として、昭和十三(1938)年に誕生。地元の高校の窯業科を出て、兄と共に家業に従事した。
「兄貴は出来がええけど、わしはてんであかん。いっつも兄貴に比べられるそ、だで面白ないし。『まあかん、愚連たる』って思とっただあ」。
戦後急成長を遂げた昭和三十(1955)年代の日本にあって、下水管の需要は引きもきらず、常滑焼きの土管製造も大車輪での操業が続いた。長さ六十㎝、太さ三十㎝の並管は、まず土を土練機にかけ、練り上げられた土が土管機を通り、心太(ところてん)の要領で形成され押し出される。それを土管一個分に切り離し、窯へと運び込む。
「まんだ若かったもんで、一個三十五㌔ほどの土管を、難なく担いどっただあ。まあ今は、ようやらんて」。
昭和三十八(1963)年、高校の一年後輩でもあった、たつ代さんを嫁に迎え二人の息子をもうけた。「常滑の嫁さは、よう働くでねぇ」。
しかし急激な国の成長の前に、公害問題が大きく立ちはだかった。やがて窯元に対する、煤煙規制も厳しさを増し、常滑焼きの風情溢れる土管は、無機質で安価なコンクリート製に取って代わられた。
そんな時代の訪れを兄が見越し、昭和四十六(1971)年に草々と廃業。
「兄貴は出来が違うで、さっさと税理士になっちまって。工場を空けとってももったいないでって、今度は植木用に九寸の駄鉢作りだて」。 しかしそれも束の間。五年後には、駄鉢から盆栽鉢へと、商品を切り替え時代の求めに応じた。
だが富める国を目指し、今度は海外から安価な輸入品が大量に押し寄せる。「まあかんて、えらて儲からへんそ」。
二年後、昭和五十三(1978)年には、急須作りへと転換。二人の子供の育ち盛り。夫婦は共に焼物の里、常滑に生を受けた者の務めであるかのように、時代の中をうねりながら懸命に生きた。
しかし常滑の煉瓦煙突から、往時を偲ばせる程の煙が舞い上がる事は無く、無情にも二十世紀の幕が降りた。
平成十三(2001)年、親会社の廃業で、ついに村田さんの窯から火が消えた。「どうせ沈没する船なら、最後まで付き合って、そこで辞めりゃあええそと」。
すぐさま翌年一月には、やきもの散歩道脇で団子茶屋を開業。

「嫁さが醤油団子焼いて、わしはもっぱらお客さん相手の営業」。
一串に五玉、直径二㎝程のみたらしが、醤油の焦げる匂いを漂わせて焼きあがる。「自家製のタレは、地元の醸造元で一番高い醤油と溜りを混ぜたんの」と、妻が焼きたてを差し出した。「一本六十円の団子売っとったって、儲かれへんて。だけどこれやっとりゃあ、遊びにも行けへんし、金遣わんそ」。二本以上注文の客には、お茶も付く。
焼物の里に生まれ、常滑の土と関わり続けた生涯。大きな土管から急須へ、そして今では常滑焼そっくりの、小さな醤油団子をせっせと焼き続ける老夫婦。
「なんか泥団子みたいそ」。土管坂へと続く人波を見つめ、こっそり笑った。
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天職一芸poem138と139の間に140が載っましたが、あれっ!どうした?
常滑をウオーキングした時に、このお団子屋さんでお団子を買いましたよ。食べながら歩いていると、串を捨てられるように、常滑焼で作ってある串入れを見付けた時は感心したものでした。
峠のお団子屋に立ち寄られたとわ!
歩かねばたどり着けない団子茶屋ですもの!
138と139の間に140をアップしてしまいましたかぁ!
またやってしまいました(汗)
窯から火が消えた翌年に団子茶屋!
思い切りましたよね。
ご夫婦の暖かさみたいなものが お店全体から伝わってくるよう…( ◠‿◠ )
あ〜絶対立ち寄って 買っちゃうなぁ〜
みたらし団子! だ〜い好きだから。
うちの近所にも 50年以上続くみたらし団子とたこ焼きの専門店があります。知立の弘法さんの縁日の時には行列が出来て大変。
お店によって 団子の形や個数や硬さや味付けが違うから お店や出店を見かけるとついつい買っちゃうんですよね(笑)
「今日も頑張ってる自分へのご褒美だ」
と心の中で言い訳をしながら…( ◠‿◠ )
みたらし団子の味にも、甘辛い物からスッキリとしたお醤油仕立てのものと、いろいろですよねぇ!
ぼくはどっちかっていうと、やっぱりスッキリとしたお醤油味ですねぇ。
こんにちは。
・醤油団子屋のお話ですね。愛知県常滑市にもお団子屋さんが有ったのですね
・醤油団子美味しそうですね。食べたくなりますね。
・自家製のたれが、、良いですね。 高山にもみたらし団子(醤油のたれ)が有ります。
私は、みたらし団子は、醤油たれの方が、好きです。甘いたれの団子は、あまり好きではないですね。