今日の「天職人」は、名古屋市千種区の「画廊女主人」。(平成十七年二月五日毎日新聞掲載)
君が選んだ引越し記念 異国の街の風景画 「二人旅した事にしよ」 壁に掲げて君は笑った さよならさえも言葉にならず 君が記念の絵を外す 壁に浮かんだ額の跡 二人で生きた時の刻印
名古屋市千種区の企画画廊「ギャラリー安里(あんり)」に、女主人の門万暉(かど まき)さんを訪ねた。

「とにかく、若い人が好き!だって人間なんて、日々衰えて行くものだし」。 どこにも隙の無い品の良さで、万暉さんは微笑んだ。
万暉さんは岐阜県多治見市に生まれたが、三歳の年に両親は離別。母と二人で名古屋へと移住した。
やがて椙山女学園へと進むものの、暗黒の時代は大東亜戦争へと雪崩れ込んで行った。「でも嬉しくってねぇ。だって英語の勉強しなくっていいんだから。敵性語だし」。 六十年前の女学生かと、思わず見紛うほどの初々しい笑顔。
終戦後は事務職に就いたものの、ドイツのモダンバレエに興味を抱き、プロの舞踊家を志した。
しかし母一人、子一人の身の上。「母が嘆いてねぇ」。已む無く二十七歳で結婚。 「本当は背の高い人が良かったのに、夫は極めて小柄。これも親孝行と言い聞かせて。でも一つだけ、お洒落のセンスが気に入ったの」。
すくすくと成長する一男一女が、学校へ上がると心が騒ぎ出した。
「主人が転勤族だったから、パン屋さんや花屋さんとか、とにかく何かやってみたくて」。近所に住む、仲の良い画商夫人の運転手代わりを務め、もともと絵に興味もあり、画家や陶芸家を訪ね歩いた。
子供の手が放れると、画商夫人の勧めもあり、昭和四十六(1971)年、夫の大反対を尻目に画廊を開店。 「主人は、三年で辞めると思った見たい。私は反対に、石の上にも三年と言い聞かせて。だから、お客さんが無くても、何の不安も無し。ただ心だけが燃え盛ってたの」。
開店から一年。池田満寿夫画伯のコレクターから作品を借りて、第一回目の小さな企画展を開催。それが評判を博した。
「当時は名古屋第一号の、マンション画廊って呼ばれてね」。以来、若手の画家や陶芸家などが、まるで何かのエネルギーに惹き寄せられるかのように集まった。企画展の予定も、作家が自主的に次々と埋めてしまったほどだ。

「作家の卵たちは、ものすごいエネルギーを発散するの。私は何の才能も無いからよかったのかも。ただ感性だけで、来る者を拒まずで」。傍らで、二代目の晃弘さんと、年上女房の博子さんが、顔を見合わせて笑った。
時として文化は、慈愛に満ちた母性の、懐深くに息衝くものかも知れぬ。
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おはようございます。
・画廊女主人のお話ですね。
・入りやすいお店ですね。
お店の経営も大変ですね。
・私は、画廊に、あまり行きません。
(近くに画廊が有るのですが、行きません。)
若い頃、画廊喫茶がありましたが、大人っぽくて入れませんでしたね~。
今はカフェやギャラリーなど、気楽なお店も多く、たまにふらっと覗かせてもらってますよ。
そんなお洒落なカフェじゃ、やっぱりお品よく振舞わねばいけませんよねぇ。
少なくともワイワイガヤガヤは、不釣り合いそうですものね。
ギャラリーのイメージって 静かで重厚感があるって感じだったけど 絵画から出るエネルギーや画家さん達のパワーで溢れてるエネルギッシュな空間なのかも知れませんね。
うちのお隣さんが画家さんなんです。
以前は画家をしながら 近所の方々に絵を教えたり…。
70歳代ですが 今でも襖2枚分ぐらいの大作を描いてらっしゃいますよ。
そして 普段着は絣の上下。
いかにも画家さんって感じですね( ◠‿◠ )
何事もやっぱり、それなりの雰囲気作りも大切なんですねぇ!
ぼくなんてTV番組の衣装が作務衣だった時がありましたが、そんなの内で来ていたら、昼間っからビールをプッハァとして、ダラダラと昼寝の惰眠をむさぼる、昭和のオッサンそのものかも知れません。
画廊ですか!
全く縁がないなぁ~⤴
「絵」は苦手!
私が絵を描けば「ピカソ」もビックリ!
どうも、筆を持つのが人一倍ダメ!
オカダさんの様に文筆家が羨ましい!
ブログのコメントも構成がバラバラで、読んでいる皆さんに申し訳なくて・・!
まぁ~⤴安否確認と言う事で我慢してお付き合いして下さい。
今日も生きてました。
ワァ~~ィ⤴
ぼくも絵心や、絵のセンスはさっぱり!
ですから子どもの頃の写生大会は、苦痛そのものでしたねぇ。
>一男一女が、学校へ上がると心が騒ぎ出した。
一男一女…どちらも存じ上げております。
「一男」のほうの兄上は「八事裏山フォークオーケストラ」というバンドに所属。
ヒットには恵まれませんでしたがコアなファンが居ました。
「一女」のほうの妹様はメジャーデビューして同じくコアなファンがいまだに居ます。
有名どころですと「ロンリー・ロンリー」「月下美人」のこの2曲です。
ファッション雑誌にはちょくちょく出てきたり、GOROのインタビューがあったり…
写真集が一冊がワニブックスからリリースされております。
お嬢様の顔立ちは母上の血筋を色濃く引いておられると思います。
あきら様
ようこそブログにお立ち寄り下さいました。
妹様のLPはぼくも持っていました。
同時にお顔がはっきりとわからないアングルの写真に、ずいぶんもどかしさを感じながらも、憧れたものでした。
実に多彩なご一族ですよねぇ。
旅先で買った絵を額に入れて、居間に飾っています。
ポケットマネーで買った絵ですから、額より安いものばかりです。
でも、旅先で買った絵と思い出は今も宝物です。
ようこそぼくのブログへ!
ありがとうございます。
足跡を標していただき!感謝申し上げます。
何でも第三者が値踏みする相場よりも、堀口さんが仰るように、一番はその絵を眺めるたびに、その絵を買った当時を鮮明に思い描けることこそが、一番の宝物だとぼくも思います。
またブラリとブログにお越しください。