今日の「天職人」は、名古屋市中区の「碁盤師」。(平成十七年一月十五日毎日新聞掲載)
歌留多(かるた)羽子板福笑い 七草までは子の天下 家族みんなも赤ら顔 遊び相手に事欠かぬ 負けるものかと兄相手 碁盤の前に腕組んで 五目並べの手を思案 呆れて兄は大あくび
名古屋市中区の黒田碁盤店、三代目・碁盤師の黒田二郎さんを訪ねた。

「碁盤になる榧(かや)の木は、床の間に上げてまえるだけ幸せもんだて」。二郎さんは、隣の妻を見つめた。

囲碁は明治以降になって、庶民の娯楽として定着。創業当時は、指し物の片手間に碁盤や将棋盤を手掛けた。
二郎さんは昭和十九(1944)年に、二男として誕生。高校を出ると、父の下で碁盤師としての修業を始めた。「最初は、四角のもんをただ黙々と削るだけの荒仕事ばっか」。

碁盤師の仕事は、九州日向地方の木主(きぬし)の元へと出向き、樹齢三百~五百年、胴回り三尺~五尺(約九十~百五十㎝)の、榧の原木選びから始まる。「榧は石当りがええ。それに弾力があるで、打っても指が疲れんで」。樫や欅は硬すぎ、桐では柔らかすぎる。

「榧は木の芯から色を深めてくでなあ」。最初は淡い色合いの木肌が、年月を経るたびに飴色の光沢が深まるからだ。

次に、数百年大地に根を張り続けた、原木の癖に合わせて墨かけをし、木取りした材に割れ止めの和蝋を塗り自然乾燥へ。「早ても遅すぎてもかん。染みがわくで」。 何度となく乾燥状態が吟味され、十年に及び榧の木は眠り続ける。
「芯の部分が乾燥するまで、狂いたいだけ狂わせたるんだて。だで最初四十㎏あった材が、十年で十二~十三㎏にまで痩せるんだて」。

碁盤師は代々、次の代に譲るために、材を乾燥させるほどだ。 永い眠りから覚めた材は、すべて手鉋(てがんな)で木口が削られ、盤の裏側に石の音を反響させる臍(へそ)を掘る。
そして下地膠(にかわ)が塗られ、表面に染み止めをかけ、専用の刀に漆を付け縦横に線を乗せる。

次に九星を打ち、和蝋で艶出しを施し、盤に見合う足を、三日がかりで彫り上げる。
仕上げは、枘(ほぞ)に足を差し込むと隠れてしまう、大入(おおい)れに銘を墨書。
「これ、よう見てみやぁ」。正方形と思い込み疑いもしなかった碁盤が、わずかに長方形だ。縦が一尺五寸(四百五十五㎜)、横が一尺四寸(四百二十五㎜)。

「座して碁盤を見ると、ちゃんと正方形に見えるんだて」。「眼の錯覚なのよ」。傍らで愛妻悦子さんが、言葉を添えた。「石だって、黒い方が白より一回り大きくて分厚い。白は膨張するでなあ」。

碁盤師は、対局者の目線の先に広がる、錯覚と言う名の小さな世界の歪みを、己の技を持って征す。
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中折りのベニヤでできた薄い盤ならあったな。マルちゃんじゃないけど爺ちゃんに相手してもらって「五目並べ」をしました。
そうそう!
爺ちゃんはちゃあんと手加減してくれたんだよねぇ!
おはようございます。
・碁盤師のお話ですね。
・碁盤師さんが見えたこと知りませんでした。ブログで、勉強になりました。
・碁盤は、全部職人さんの手作りなのですね。手間がかかっていますね。
・私は、実際に碁盤を、見た事が有りません。碁盤を、購入する方は、プロ,アマチュア,趣味で好きな方が、買うのでしょうね。 碁盤の値段が、分かりません。
・碁盤は、壊れたら修理を、するのかそれとも新しい碁盤を、買うのかな?
私は、囲碁を、した事が有りません。
子供の頃、足の付いた碁盤で五目並べをやった事があります。誰と何処でやったんだろう。黒と白の碁石が綺麗でした。
そりゃあ凄い!
ぼくなんて薄っぺらな、二つ折りになる碁盤で、近所のご隠居の澄川のじい様に、五目並べの手解きを受けた程度です!
「木」を扱うと言う事で・・・「木」繋がりで書いてみました。
以前、可児市にあります「ヤイリギター」へ工場見学へ行った時
工場へ行くと材木の製材所のようで、いっぱい「木、木」でした。
まぁ~⤴木の製品ですから当然と言えば当然ですけど!
制作を終えたギターの保存場所には音楽が流れています。
きっとギターもホッと癒されているんでしょうねぇ!
予約すれば無料でギターが出来るまでの職人技が見られますよぉ!
何か?岐阜地方、今日10日「梅雨入り」したとか⤴
そんな事「梅雨」だけにツユ知らず!
なんちゃって!
あああ!
オチはなんじゃい、そっちかよ~っ!
知らなかった〜
碁盤が長方形だったなんて。黒石のほうが大きいだなんて。
錯覚…恐るべし。
囲碁といえば 大河ドラマ『 おんな城主直虎 』 で 直虎と政次が碁を打つ場面を思い出します。二人それぞれ離れた場所にいながら 相手を想い碁を打つ。
素敵なシーンだったんですよ。
ロマンチックな…
一手打つ間の、恋物語ですか!
ぼくは大河をみていなかったので、そんな素敵なシーンを見逃してしまっていました!
ああ、残念!