「くされ縁」

写真は参考。

一人っ子だったぼくは、姉か妹が欲しくて欲しくて、何度も何度もお母ちゃんに強請って、お母ちゃんを困らせたものでした。

ぼくの結婚時の前夜だったか、母と二人で食卓を囲んでいた時の事。と言ってももう深夜でしたから、遅く帰ったぼくに酒のあてを作ってくれて、ぼくが一人手酌で呑んでいた時だったと思います。「いよいよ明日、お前も嫁さん貰うんやな」。母は感慨深げにそう言って、珍しくぼくに酌をせよと、グラスを差し出したものです。しばらく他愛ない昔話に興じていると、母が一人語りを始めたのです。「お前は小っちゃい頃、お姉ちゃんや妹が欲しい欲しいと、泣いてぐずるからお母ちゃんも困ったもんやった。でもさすがにお姉ちゃんは今更出来ぬ相談だけど、妹ならばと真剣に考えたもんや。本当はお母ちゃんのお腹の中に、お前の妹か弟が出来るには出来たんやけどなぁ・・・。ところがあかなんだ。本当にお前には申し訳ない事した。すまなんだなぁ・・・」。母はほんのりと顔を赤らめ、目頭を押さえてぼくに詫びたものだ。初めて聞かされたことだっただけに、お母ちゃんをどう宥めればいいかもわからず、結果としてぼくがお母ちゃんを苦しめてしまっていたことを、今更ながら悔いたものでした。

ですからぼくは、本物の兄妹の関係とか絆とかを、身をもって体験したことが無く、ただただ空想の中で兄妹の理想像を追い求めていただけだったのかも知れません。

そしてもし仮にぼくにも妹がいたとして、その妹の嫁ぐ日が訪れたとしたら、ぼくはどんなお兄ちゃんでいただろうと、そんな空想を曲にしたのが、この「くされ縁」です。

まずは、弾き語りで「くされ縁」をお聴きください。

「くされ縁」

詩・曲・唄/オカダ ミノル

親父の涙を見た大粒の涙拭いもせず

 湯呑に冷酒をついで一思いに飲み干した

門出に涙は禁物とたしなめるようなお袋の声

内掛けに身を包んだ妹が三つ指をついた

 鮮やかに時は舞い 想い出を運び来る

 泣き虫泥んこ顔が 見違えるくらい綺麗だ

幸せ半分もしももしも ぼくのでよかったら

荷物にならないさ持ってお行きよ 何も無い代わりに

お袋は想い出をまるで手繰り寄せるように話す

親父の元へ嫁いだ喜びそして哀しみ

親父はくされ縁だと赤い顔で笑った

妹はうつむいたまま小さく一つうなづく

 鮮やかに時は舞い 想い出はよみがえる

 やり場の無い思いを胸に 妹を送り出した

幸せ半分もしももしも ぼくのでよかったら

荷物にならないさ持ってお行きよ 何も無い代わりに

 人は誰もがいつも 幸あれと願うもの

 連れ合い連れ添う時の 永さは愛の重さだ

幸せを幸せと言えず照れ笑い 親父の言葉のように

「くされ縁よ」とお前が言えるまで この家の敷居は跨ぐな

この曲が出来た当時は、「くされ縁」ではなく、妹の結婚と言う祝宴の宴だということで、当て字で「くされ宴」としておりました。しかしなかなかどなたにも、そのぼくの勝手な当て字の真意は伝わらず、ご批判をいただいた物でした。そしてそれを曲げ、「宴」ではなく「縁」を用いるようになったのです。まあ、その方が、何より分かりやすいっちゃー分かりやすいですものね(汗)

続いて、CDに収録されている、アコースティックサウンドの「くされ縁」を、弾き語りとお聴き比べいただければと思います。バックに薄っすらとストリングス系のシンセとベースかぶせられています。

写真は参考。

姉も妹も結局おらず、一人っ子のままでしたが、それでも貧乏ながら、両親の愛情を独り占めに出来たから、他の何物にも代えがたいものです。

★今日2月4日は、お二方お誕生日の方がおいでです。愛知県のももかさん、そして日置江のヒロちゃんの今日はお誕生日。いつものようにささやかに、Happy Birthday~「君が生まれた夜は」でお祝いをさせていただきます。

★毎週「昭和の懐かしいあの逸品」をテーマに、昭和の懐かしい小物なんぞを取り上げ、そんな小物に関する思い出話やらをコメント欄に掲示いただき、そのコメントに感じ入るものがあった皆々様からも、自由にコメントを掲示していただくと言うものです。残念ながらさすがに、リクエスト曲をお掛けすることはもう出来ませんが…(笑)

今夜の「昭和の懐かしいあの逸品」は、「初めてのバレンタインチョコ!」。初めてバレンタインのチョコレートをいただいたのは、中学3年の事だったと記憶しております。ちょうどクラスでも交換日記が流行っていた頃で、ぼくもクラスの女子A子さんと他愛もない事を綴った日記を交換していたものです。自分が日記に書き込んだら、翌日彼女の机の棚の奥に、こっそりと大学ノートを忍ばせると言う、これまたなんの捻りも無いシステムでしたねぇ。そして迎えたバレンタインデー。とは言え、バレンタインデーの事は知るには知っていましたが、自分とは住む世界が違う気がしていたのか、無関心だったような気がします。そしてその日は、A子さんが交換日記をぼくの机の棚の奥にこっそり入れる番。まさかA子さんからその日、人生初となるバレンタインチョコをいただけるなんて、これっぽっちも期待しておりませんでした。周りの男坊主どももみんな押しなべて野暮ったい奴ばかりで、バレンタインのバの字すら感じられなかったものです。でもクラスで一番秀才のB君だけは、こっそり女子たちから何かを貰っては、コソコソッと自分の学生鞄の中に仕舞い込んでいたものです。まあ、それがバレンタインチョコだろうなって、皆見て見ぬふりをしたそんな調子だったものです。ぼくは放課後、いつものようにA子さんから回って来た交換日記を鞄に詰め込んで家へ。なんだか今日の交換日記は、異常に分厚いなと、そう思った程度でした。そして家に帰って日記を開いてビックリ!奇麗な紙で包んだ小さなボール紙製の箱が!中を開けると、ちょっと歪な形をしたハート型のチョコレートじゃないですか!でもそのちょっと歪なハート型のチョコレート。ビターな感じのチョコレート色と、ミルクが分離したのか、マーブル柄のよう。その様子を覗き見ていたお母ちゃんが、「なんやのそれ!あっ、もしかして手作りのバレンタインチョコやないの!どれどれ味はぞうやろ?」と、ぼくがこの世に生まれ初めていただいた、例え歪とは言えハート型したバレンタインチョコを、真っ二つにバキッと折って、「これ半分、あんたにも上げるわ!」と。この時ばかりは、無神経すぎるお母ちゃんに怒りを覚えたものでした。

今回はそんな、『初めてのバレンタインチョコ!』。皆様からの思い出話のコメント、お待ちしております。

このブログのコメント欄には、皆様に開示しても良いコメントをドンドンご掲示いただき、またその他のメッセージにつきましては、minoruokadahitoristudio@gmail.comへメールをいただければ幸いです。

投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「「くされ縁」」への22件のフィードバック

  1. 今晩は。

    ・昨日2/3(月)動画(くされ縁弾き語りとhappybirthday~君が生まれた夜は)を、見ました。

    ・くされ縁弾き語りとhappybirthday~君が生まれた夜は良かったです。素晴らしかったです。

    ・私は、オカダミノルさんの動画を、見れて良かったです。 嬉しかったです。動画を、見る事が楽しみです。

    ・2月4日 愛知県のももかさんと日置江のヒロちゃん誕生日おめでとうございます。良い事有ります様に。

    ・くされ縁 私の好きな曲です。
    歌詞が良いですね。曲の物語が、イメージ出来ますね。

    オカダミノルさんは、一人っ子だから妹が欲しかったのですね。もし妹さんが、いて妹さんが嫁いだらこんな感じ何だろうなと想像して書いた曲なのですね。

    オカダミノルが、20歳くらいに書いた曲なのですね。

    ・私は、弟,妹が欲しいと母におねだりを、していません。おねだりした記憶が有りません。

    ・オカダミノルさんが、結婚前夜の時に、お母さんとご飯を、食べてから 晩酌(お酒)を、したのですね。 私は、知りませんでした。 ブログを、読んで知りました。

    (その時に、オカダミノルさんが姉か妹が、欲しいと言った事を、お母さんさんが言った事を、知りました。)

    (テーマ)バレンタインチョコ
    バレンタインチョコ(手作り,市販で買って来たチョコ)は、男の子(学校の同級生等),父親に、あげた事が有りません。
    (バレンタインチョコを、男の子(学校の同級生等),父親にあげた記憶が有りません。)

    手作りチョコを、作った記憶が有りません。

    交換日記は、小学生の時 女の子同士でやっていました。覚えています。

  2. 今晩は。
    ・くされ縁の音源を、聞きながらコメントを書きました。

    ・CD版のくされ縁と動画(くされ縁 弾き語りとhappybirthday~君が生まれた夜は)良かったです。 素晴らしかったです。

    ・CD版のくされ縁を、聞ける様になった事有難いです。有難うございます。

  3. バレンタインデー迄 あと10日
    百貨店ではお目当てのチョコレートを買うのに何時間も並ぶ人達も!
    でも 自分の為に買う女性が多いとか?

    私が初めて バレンタインデーチョコを渡したのは? たぶん 不二家の ハートのチョコレートを 同級生に手渡ししたような?
    恋心を抱いて初めて 手作りをしたのは 中学2年の時 でした (#^.^#)
    私も全然きれいなハートのチョコが出来なくて 失敗した歪なチョコが冷凍庫に何ヵ月も入っていました (笑)

    先日 オカダさんから教えて頂いた 干し柿の天婦羅 昨日作りましたよ~
    あつあつよりも 冷めてからのほうが 甘さが和らぎ 冷酒にぴったりでした。
    恵方巻を届けてくれた友達にもお裾分け! 芋焼酎で 一杯 やったそうです。
    恵方巻の具材は アボカド&エビ そして海鮮の 二種類 超豪華でした~
    友達に感謝 感激です (*^.^*)

    1. 物々交換は、昭和の名残を感じていいものですねぇ。
      家のお母ちゃんなんて、夕餉の時間になると両隣の台所から漂う匂いを嗅いで、「お隣はコロッケみたいだし、お向かいは肉じゃがのような匂いだで、家はオムレツでも作るか!」と献立を決めていたものです。
      しばらくするとわが家の食卓には、オムレツにコロッケと肉じゃがのお裾分けが、デーンと居並んでいたものです。

    2. 不二家のハートチョコ中坊の時に貰った!
      確か?中にピーナツが入ったチョコ
      それって、ひょっとして、あたしかも?
      年齢的に近いし・・?
      でも、中坊の頃って、そんなハイカラなバレンタインなんてなかったわぁ!

      1. 年齢がハートさんと近いて、そりゃあ失礼にも程がありませんか(笑)

  4. 私も兄弟が居ない一人っ子だったのでオカダさんの気持ちがよくわかります。
    兄弟がいる人の話を聞いてると羨ましく感じてしまいますね。

    1. ぼくにとっては、従兄妹のお兄ちゃんとお姉ちゃんが、兄弟の代わりでした。
      でもやっぱり、本当の兄妹とは違うんでしょうね。

  5. バースデーソングありがとうございます。無い物ねだりで一人っ子が羨ましかったです。3人いれば三等分、母親の愛情を独り占めできた入院生活は嬉しかった(保育園の時)
    バレンタインは高校生の時にハートを一粒だけ入れてあとは彼のイニシャルの英語の形したチョコを瓶に入れて渡しましたよ。文化祭で告白して撃沈した相手でしたが卒業してもからも好きでしたね。今でも時々、思い出しますよ。

    1. オカダさんおはようございます(^-^)/
      お誕生日のバースデーソングありがとうございます(*^ー^)ノ♪嬉しかったです(^-^)/
      高山のバスツアーでお座敷ライブの時に生でバースデーソングを聴けた事を思い出しました(*^ー^)ノ♪ 一生の思い出です(^-^)/
      オカダさんありがとうございます\(^-^)/
      井坂十蔵さんお祝いの言葉ありがとうございます(^-^)/
       

  6. 私は 双子ですが なにかと母親から妹と比較された記憶が多くって…(泣)
    可愛げがなく 甘え下手でしたから。
    ただ妹とは 喧嘩した記憶がほとんどないぐらい仲は良かったです。今も…

    バレンタインのチョコを渡した事?
    短大生の時に初めて 社交ダンス部の先輩に渡したのが初めてかも⁈
    それ以外は 中学・高校と何故かチョコを頂く事ばかりでしたから(苦笑)

    1. あらまあ、ソシアルダンスを!
      だから「私もボックスなら」って!
      甘え下手なのは、お姉ちゃんとしての自覚がそうさせたのでは?

      チョコをいただいてばかりとは!男前ですねぇ!

    2. 夢ちゃんは「塚(宝塚)ぽいもんねぇ!」
      わけぇ~頃は、モテたと思います。
      勿論!あたしだって、だぁ~れもぉ~!知らんから言うけど
      モテた!「か・な・り!」

  7. 『くされ縁』しみじみとした良い曲ですね。自分の幸せ半分を持たせてあげたいという気持ちは、切なくて真心を感じます。
    1ヶ月前、ある講座の先生から「くされ縁」は鎖(鏈)のように強固な「鏈縁」からきていると聞きました。諸説あると思いますが、少し「くされ縁」のイメージが変わりました。
    日本語は難しいデス。

    バレンタインデーの思い出は、友達がバスの中で知り合った男の子にチョコを渡すというので、物陰から見守る役をしました。ドキドキでした。そういえば、別の友達の憧れの先輩の家まで、付いて行ったこともあります。やっぱりドキドキで、チョコのラッピングの柄までハッキリ思い出します。
    地味な役まわりは、私らしいです。
    (^-^)

    1. 「くされ縁」は鎖(鏈)のように強固な「鏈縁」ですか!
      妙に納得出来ちゃいました!
      ありがとうございます。

  8. 私も中学生の頃には、不二家のハートチョコを使いました。
    もちろん、憧れの君にあげました。
    仕事をするようになってからは、相手の人の事を思い浮かべて、千趣会の本の中からお似合いのチョコを探すのが楽しみでした。

    1. いいもんですねぇ。
      憧れの君ですか!
      なんとも羨ましい限りです。

  9. こんばんは
    ももかさん、ヒロちゃんさん、お誕生日おめでとうございます(^^)
    おかげで私の好きなオカダさん、Happy Birthdayを聞けました。ありがとうございます。
    オカダさん、くされ縁  ありがとうございます。
    くされ縁て諦めながら人付き合いしてると我慢強くなれる気がします。私は姉が居るのですがソリが合わないのでまさにくされ縁。

    お題のバレンタインチョコですが、小学生の頃が一番貰えた記憶です。貰ったのに学校では禁止とのことで先生に叱られていました。何故、あげた方じゃなく、貰った方が叱られるのか世の不条理を感じていました。
    今では義理チョコしか貰えなくなりましたが貰えないよりは良いかと思っています^ – ^

    1. どなたかの小説で、兄妹とは特急列車の指定席でたまたま隣り合わせたような関係だとありました。
      どんなに仲が良くても、それこそそりが合わなくても、どちらかが天に召されて途中下車するまでは、その指定席に座っているしかないんだと。
      兄妹のないぼくは、へぇーそんな感じなんだと、妙に納得したことがありました。

  10. Today, I went to the beach front with my children. I found
    a sea shell and gave it to my 4 year old daughter and said “You can hear the ocean if you put this to your ear.”
    She put the shell to her ear and screamed. There was a hermit crab inside and it pinched her ear.
    She never wants to go back! LoL I know this
    is completely off topic but I had to tell someone!

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